抗潰瘍療法(制酸剤)

1.抗潰瘍療法とは

「酸のないところに潰瘍はできない」と古くから言われていましたが、胃・十二指腸潰瘍の治療は胃酸をいかにして抑えるかの戦いでした。

1980年以前は、胃酸を強力に抑制する薬剤が無く、安静、食事療法に胃酸を中和する制酸薬や抗コリン薬が用いられていましたが、その治療効果は高くなく、胃・十二指腸潰瘍は手術治療となる例が多く見られました。

1980年代になると強力に胃酸を抑制するヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)が登場し、治療効果が飛躍的に改善し、胃・十二指腸潰瘍は外科の病気から内科の病気になりました。さらに1990年代になるとプロトンポンプ阻害薬が開発され、H2ブロッカーを凌ぐ治療成績が得られるようになりました。

2.酸分泌抑制の仕組み

胃酸は胃壁にある壁細胞という細胞から胃の中に分泌されます。ヒスタミンH2受容体拮抗薬は、壁細胞に存在するヒスタミン受容体をブロックして壁細胞からの胃酸の分泌を抑制させます。ところが壁細胞にはムスカリン受容体やガストリン受容体といった異なる種類の受容体があり、これらの受容体に対する刺激はH2ブロッカーでは抑制できず、胃酸分泌抑制が不完全でした。

プロトンポンプ阻害薬は、胃酸分泌の最終段階であるプロトンポンプをブロックするため、効率よく酸分泌を抑制させることができます。これがプロトンポンプ阻害薬の高い治療効果をもたらしています。

3.治療の効果

胃・十二指腸潰瘍はH2ブロッカーあるいはプロトンポンプ阻害薬を服用することで、だいたい2ヶ月で治癒します。これらの薬を飲み始めると、数日で症状が軽快したり消失したりすることがあります。しかしながら、潰瘍は治癒していませんからここで服薬をやめてしまうと、すぐに症状が出るばかりではなく、潰瘍が増悪してしまう可能性があります。症状が消失しても、主治医の指示通りしっかり服薬することが肝要です。

治癒後も、これらの薬を中止すると潰瘍は高率に再発することが知られています。H2ブロッカーなどを長期間内服する「維持療法」を行うことで潰瘍の再発を抑制することができます。

近年では、潰瘍の多くを占めるヘリコバクターピロリ菌陽性潰瘍の治療は除菌治療が行われるようになり、潰瘍治療法は新たな時代を迎えています。

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