大腸癌に対する手術療法(開腹ならびに腹腔鏡)

1.手術療法の基本

大腸癌に対する手術療法とは、病変部位を含めて腸管とその周囲にあるリンパ節を同時に切り取ることです。

従来はおなかを大きく切開して腹腔内を開放し、外科医が腸管に直接触れながら操作を行ってきたのです。これを開腹手術といいますが、病変のひろがり具合をじかに確かめることができ、血管の処理や剥離を確実に行うことができます。

2.腹腔鏡手術

1980年代後半、おなかに小切開をおきカメラを入れてモニターで腹腔内を観察しながら、特別な器具を操作して血管の処理や剥離を行う技術が開発されました。これを腹腔鏡手術といいますが、この方法が1990年代前半から大腸癌手術に取り入れられ、早期から中期の大腸癌に対して広く行われるようになってきました。

3.手術法の比較

開腹手術と腹腔鏡手術とで一番違う点は、おなかの創の長さです。通常の開腹手術では15cm前後の切開が必要です。広範囲の腸管の切除が必要な場合にはもっと長い切開が必要になることもあります。そうすると術後の創の痛みを抑えるために、多量の痛み止めが必要になりますし、なかなか体を動かすことができず離床が遅れる原因にもなります。ひいては術後の腸管運動の回復が遅れて経口摂取の開始が遅れることにもなります。

一方、腹腔鏡手術では、1cm程度の切開を数箇所におくだけで腹腔内の処置を行うことができます。剥離した腸管を体外に出すために5~6cmの小切開は必要ですが、開腹手術に比べて随分創が目立たなくてすみ、術後の創痛が軽く、腸管運動の回復も早くて経口摂取も早期に開始できます。また長期的にみても創が短い分、癒着を起こしにくいと考えられています。

また、今までのいくつかの報告によると、手術時間は腹腔鏡手術の方が長くかかりますが、丹念に止血操作を行う必要があるため結果的に出血量も少量に抑えることができます。

4.腹腔鏡手術の問題点

腹腔内の操作に実際の触感や立体感がないことや、視野がモニターに写る範囲に限られることなどから、思わぬ臓器損傷の可能性があることや全体像がなかなか把握しにくいなどの欠点が指摘されてきました。腹腔鏡手術を術者として安全に行えるようになるまでには、数十例の経験を積む必要があります。そのためにわが国においてもブタを使ったトレーニングコースが各地で開催されております。

また、導入されて日が浅いために進行した大腸癌に安全に施行できるかどうかが明らかではありません。この点を明らかにするために、各国で臨床試験が行われてきました。わが国でも現在国立がんセンターが中心になって開腹手術と腹腔鏡手術の長期成績を比較する臨床試験が進行中です。

 

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