肝切除術

肝臓はお腹の右上にある臓器で、1〜1.5kgと人間の臓器の中では脳と並んで最も重い臓器です。代謝、解毒・排泄、胆汁の産生、免疫能など、生命維持に欠かせない重要な働きをしています。この肝臓の一部を切り取る手術が肝切除術です。肝切除術の適応となる病気は、肝臓がん(原発性肝がん)が大部分ですが、その他に転移性肝がん、肝良性腫瘍、肝外傷などが対象となります。

肝臓は大きく右葉、左葉の二つの葉からなり、さらに8つの部分(亜区域)に分けられます(図)。肝切除術は、切り方によって部分切除、亜区域切除、区域切除、葉切除、拡大葉切除、3区域切除などの種類があります。これらの部分は肝臓に印が付いているわけではなく、手術に際しては、その部分を栄養する門脈や肝動脈を縛ったり、血管に色素を注入したりして色の変化によって境目を見極めます。そして、電気メス、ハーモニックスカルペル(超音波振動手術器具)、CUSA(超音波外科用吸引装置)、マイクロターゼ(マイクロ波手術器)など、様々な機械を使って肝臓を切ります。

肝臓は生命維持に不可欠な臓器であり、全部を切り取ることはできませんが、正常の肝臓では、3/4切り取っても大丈夫とされています。一方、肝がんは慢性肝炎、肝硬変を背景として発生することが多く、肝臓は正常に比べて弱っており、大きく切除しすぎると残りの部分で生命を維持できない状態(肝不全)になる危険があります。この、どのくらい切除できるかという肝臓の力を肝予備能といい、いくつかの血液検査を組み合わせて判断します。手術に際しては、この予備能を正確に評価することがきわめて重要です。

肝がんに対する肝切除術の成績ですが、1年後の生存率が87.8%、3年後69.2%、5年後53.4%となっています(表)。腫瘍の大きさ、個数、門脈への浸潤の有無・程度が手術後の予後に大きく影響する因子で、その他に、背景となる肝臓の状態が影響します。肝がんを切除した場合、肝臓そのものはB型やC型肝炎、肝硬変の状態のままであり、その後、また新たながんの発生することがしばしば見られます。従って、手術後は定期的な通院、検査が大切で、早期に発見して適切な治療を行うことが必要です。肝臓がんの治療が「モグラたたき」にたとえられる所以です。


図:肝区域
出典:「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約」、金原出版、p.5<図1>



表:肝細胞癌に対する肝切除症例の累積生存率
タイトル 分類項目 n数 生存率(%)
1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年
肝切除全症例   27,062 87.8 78.3 69.2 61.1 53.4 47.5 41.1 35.9 31.2 27.7
最大腫瘍径 2cm以下 5,017 95.5 90.1 83.8 76.8 68.0 60.3 53.1 46.9 41.1 36.6
超2〜5cm 13,896 91.4 82.7 72.7 63.9 55.6 49.1 42.0 36.5 31.7 27.8
超5〜10cm 4,972 80.6 66.5 56.3 48.1 42.0 38.0 33.1 28.3 23.8 21.6
超10cm 2,127 66.6 51.8 42.7 36.8 32.1 29.1 25.4 22.8 20.8 20.8
腫瘍個数 1個 19,046 90.8 82.9 74.4 66.8 59.2 53.2 46.5 41.2 36.2 32.0
2個 4,011 86.1 74.6 64.1 55.0 46.4 39.4 33.6 26.9 22.3 19.9
3個以上 3,174 75.1 59.1 47.5 37.6 30.0 25.8 20.5 17.5 14.3 12.6
門脈侵襲 Vp0 22,079 91.6 83.3 74.2 65.9 57.6 51.0 43.9 38.3 33.4 29.6
Vp1 1,987 78.6 63.1 52.6 44.3 38.7 34.9 32.9 29.5 24.7 20.9
Vp2 822 59.2 42.3 31.8 26.2 23.8 23.4 21.5 18.9 17.7 17.7
Vp3 以上 976 50.4 32.8 25.8 21.9 18.4 16.6 14.9 13.0 8.5 -
非癌部所見 nl 2,173 86.8 77.0 69.4 63.7 59.0 55.9 50.0 46.8 40.9 39.0
ch,lf 9,374 90.3 81.9 73.7 66.7 60.4 55.9 50.0; 46.8 40.9 39.0
lc 11,631 86.7 76.6 66.5 57.5 48.1 41.2 34.1 29.5 24.8 21.5
肝障害度 肝障害度A 17,433 89.9 81.5 73.4 65.6 58.4 52.3 45.8 40.9 35.8 31.9
肝障害度B 7,260 85.2 74.0 63.0 54.3 45.3 39.4 33.2 28.0 23.9 20.8
肝障害度C 631 74.1 59.1 48.3 42.1 35.5 33.7 29.8 22.0 20.3 15.2
肉眼的進行度 進行度I 3,342 96.3 92.4 86.9 80.1 71.3 64.5 56.6 51.7 46.0 40.5
進行度II 11,772 93.1 85.6 76.7 68.3 60.1 53.4 45.8 39.3 34.4 30.3
進行度III 5,817 83.4 70.2 58.5 49.5 41.9 36.5 31.4 27.4 23.6 21.1
進行度IV A 1,687 62.0 44.0 34.0 27.5 22.9 21.0 19.6 15.4 11.5 10.7
進行度IV B 319 52.7 36.0 25.2 22.6 15.5 14.3 14.3 14.3 14.3 14.3

出典:肝臓 48巻3号(2007)、日本肝臓学会、p.135<Table18>


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