肝動脈塞栓療法

肝動脈塞栓療法は1980年代にわが国で始まった治療法で、肝臓がんを栄養する動脈を詰めて「兵糧攻め」にする治療です。それ以前には、手術で肝動脈を縛る治療法がありましたが、それに取って代わりました。足の付け根から細い管(カテーテル)を挿入し、レントゲンで見ながらがんを栄養する動脈に管を誘導して、動脈を詰める物質(塞栓物質)を注入します。

肝臓は門脈と肝動脈のふたつの血管に栄養されていますが、肝がん組織はほとんどが動脈からの栄養であり、この動脈に塞栓物質を流し込むことによって腫瘍の死滅をねらいます。がん以外の正常肝組織は動脈血流が絶たれても門脈からの血液で栄養されるため、障害を受けにくく、また、詰めた動脈は比較的早くに血流が通るようになり(再開通)、このことががん組織への別のところからの血流を発生しにくくするといわれています。

油性造影剤であるリピオドールは肝がん組織に集積しやすい性質があり、これに抗がん剤を混入して塞栓術の際に併用することによってがんへのより高い抗がん剤治療効果を狙う治療法(chemo-lipiodolization)も開発され、効果をあげています。

塞栓術は、治療効果の点からは、肝切除術、ラジオ波焼灼療法に次ぐ3番目の治療法と位置づけられます。がんの個数、場所などから上記二つの治療法が当てはまらない場合、あるいは上記の治療法と組み合わせて行われます。治療後には、肝臓機能の一時的悪化、発熱、上腹部の鈍痛などの副作用が見られることがあります。肝がんに対する治療成績は1年後の生存率が77.2%、3年後42.4%、5年後22.6%となっています。(表)

肝硬変の進行で肝臓の機能が非常に弱っている場合、がんによって門脈が詰まっている場合などは、本治療法の対象外となる場合があります。

 

 表:肝動脈塞栓術の治療成績
タイトル 分類項目 n数 生存率(%)
1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年
肝動脈塞栓療法全症例   23,368 77.2 57.9 42.4 30.6 22.6 16.7 12.7 9.2 6.5 4.4
肝障害度 肝障害度A 11,094 83.7 66.7 51.4 38.6 29.8 22.7 18.3 13.3 8.7 5.7
肝障害度B 8,365 75.4 54.6 37.5 25.8 18.2 12.6 8.5 6.3 4.9 2.9
肝障害度C 2,303 56.8 32.7 19.8 11.9 7.0 5.2 3.9 2.8 2.8 2.8
腫瘍個数 1個 9,444 82.9 67.1 52.7 39.4 29.7 22.6 18.0 13.3 9.4 6.9
2個 4,535 81.6 62.4 44.9 32.3 23.0 16.9 11.0 8.8 6.5 3.7
3個 2,592 79.3 56.5 37.6 25.3 19.0 12.7 9.1 6.7 4.5 2.2
4個 1,201 81.1 53.9 36.8 26.9 19.0 13.6 9.3 7.4 4.6 4.6
5個以上 4,827 62.3 39.5 25.0 16.8 11.9 8.4 6.3 4.2 2.8 1.5

出典:肝臓 48巻3号(2007)、日本肝臓学会、p.136<Table20>


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