一般のみなさまへ for citizen

北陸支部第32回市民公開講座

胃がんから身を守るために―金沢市医師会の取り組み―

小山信(金沢市医師会)


金沢市では1974年(昭和49年)より老人保健法に基づく「胃がん集団検診」を行ってきましたが,その受診率は2~3%と非常に低いものでした.そこで,より多くの市民の方に気軽に受診していただけるように,1983年(昭和58年)から,かかりつけ医で受けられる「個別検診」通称「すこやか検診」をスタートさせました.
すこやか検診とは,金沢市における基本健診をはじめとする各がん検診をふくめた個別検診の総称で,対象者は金沢市在住の国民健康保険,政管健保の家族となっています.金沢市医師会は,金沢市よりすこやか検診業務すべてを委託され,現在まで行ってきています.その検診システムの導入により,現在の受診率は,基本健診で30%,胃がん検診では16%以上となりました.

金沢市医師会方式の胃がん検診のシステム

各検診の受診券はその年の1月1日現在の居住者,有資格者に対し,4月中旬までに金沢市から配布されます.胃がん検診の場合の受診対象年齢は40歳45歳50歳55歳から69歳で,平成14年からは40歳から5歳ごとの節目に,胃の健康度をみるペプシノゲン検査を加え結果に反映させ,胃がんの早期発見に役だてています.また70歳の受診者にはペプシノゲン検査のみを行い,結果が陽性で胃の健康度に不安有りと診断された時は,胃内視鏡検査での精密検査の後,かかりつけ医が責任を持ってその後の経過をみるよう指導してきています.
検診方法は現在のところは高濃度バリウムを用いた直接撮影で行われていますが,今後は胃内視鏡検査での検診も視野に入れ,現在検討中です.レントゲンの撮影条件やその方法などについては事前に説明会を行い,精度の徹底を図ってはいますが,各施設によりそのレベルに差がでることは否めません.そこで,どの医療機関で受けてもその検診精度を同等に維持できるようなシステム考えました.それが金沢市医師会方式といわれています.

金沢市における胃がん検診の流れを説明します.
No.1.フローチャート参照

1. 検診受診者は金沢市から配布された検診の受診券を持って,かかりつけ医を受診します.かかりつけ医は検診の内容を確認し,胃がん検診を行います.かかりつけ医は自分が撮影したレントゲンフィルムを読み診断し,撮影された胃のレントゲンフィルムに結果を添えて,金沢市医師会の二次読影委員会に提出します.これを一次読影といいます.
No.2.一次読影のスライド参照
2. 医師会の読影委員会では一次検診医に専門医を加え,2名一組となり,提出されたレントゲンフィルムをすべてみなおします.そこでは,かかりつけ医は自分が撮影したフィルムの診断には関わらないように組み合わされています.それが,専門医とかかりつけ医がペアとなって行うシステムで「二次読影」と言われています.ここでの専門医とは,日本消化器内視鏡学会の専門医であることを指しています.
No.3二次読影のスライド参照
3. かかりつけ医が診断した一次読影の判定,あるいは専門医とペアで行った二次読影の判定で,いずれか一方でも胃内視鏡による精密検査が必要であるといわれた受診者のレントゲンはすべて,さらに経験のつんだ専門医から選ばれた6名で構成されたレフリーにまわされ,最終判定がなされます.その6名の判定をレフリー判定と称し,それが検診の最終判定となります.
No.4.レフリー判定のスライド参照
4. その結果がかかりつけ医のところにもどされ,それを基にかりつけ医が結果を受診者に説明するという流れで検診は進みます.また,最終判定で胃内視鏡による精密検査が必要とされた方については,かかりつけ医が責任を持って消化器専門医療機関を紹介し精密検査を受けるように指導します.そしてその精密検査の結果は金沢市医師会の読影委員会へ報告され,医師会でその結果について把握するというシステムになっています.
No.5.フローチャート再度参照

「読影」とは?

読影という言葉は耳慣れない言葉かもしれませんので,簡単に説明しておきます. 読影(どくえい)とはレントゲンなど,画像検査であらわされた所見を読み,その上で診断することをいいます.したがってこの金沢市医師会方式では,撮影されたレントゲンフィルムは少なくとも二段階で読影され,疑わしいものについては,三段階の読影をおこなうことで,より正確な判定が下されるようにしています.このシステムの利点は,がんの見逃しを少しでもなくすことと,無駄な精密検査を減らすことにあると考えています.

「金沢市医師会方式における読影委員会」とは?

読影委員会は,磨伊正義先生をレフリー委員長とした,日本消化器内視鏡学会,日本消化器がん検診学会の指導医,専門医,認定医を要件とする6名のレフリーを中心に,二次読影担当の専門医,医師会の担当理事など約60名で構成されています.
この検診は毎年,5月から10月まで行われますので,その間約25回の二次読影会が行われ,そこでは毎回興味ある症例を提示し勉強会を行います.またすべての検診が終了した後,レフリー委員長の磨伊先生の司会のもと,その年に発見された胃がん症例全例と疑い症例,興味ある症例などについて,検診結果,精検結果,病理所見,手術所見を含め,各検診医,手術担当医,病理担当医,他レントゲン技師が集まり,症例検討会が開催されます.
No.6.読影専門医内訳
No.7.読影委員会1

No.8.読影委員会2

胃がん検診の判定基準と検診のその精度

普通,胃がん検診を受けると,もしレントゲンで異常所見が認められたときには「内視鏡による精密検査を受けてください」と結果が通知され,その通知を受けて精密検査を受けに行くことになりますが,そこで問題にしなければならないことは,検診の精度という問題です.現在我々が行っている検診は,市内の170箇所を越す医療機関で行われているわけですから,その各々の医療機関がそれぞれの診断基準で精密検査を指示したとしたら,毎年膨大な人数の方が内視鏡検査をする必要が出てくることになると思われます.そうなると,一次検診で行われた胃がん検診の精度が問題となり,効果的な検診とはいえなくなるわけです.
つまり検診の精度について考えるとき,行われた精密検査が,無駄なものであったかどうかを評価するところにもあります.しかし,決してただ精密検査を必要とする割合を減らせばいいということではありませんし,そのことにより,がん発見率が下がってはもともこもありません.またそのことで,検診で見つかるべき「がん」まで見逃されてしまっては大変なことになります.そこで我々は,がん発見率を下げず,なおかつ,少しでも無駄な精密検査を減らすためにと考えたのが,金沢市医師会方式の読影システムというわけで毎年約20例前後のがんが発見されています.この検診におけるもうひとつの特徴に,5年前から導入した特定年齢に対するペプシノゲン検査があり,40歳から65歳までの5歳ごとの受診者に胃のレントゲン検査と併用で施行することにより検診の精度向上に役立っています.またそれまで胃がん検診の対象年齢から外れていた70歳には,ペプシノゲン検査のみ施行しています.これは,自身の胃の健康度を知ることによりその後の食生活などに注意を喚起するためにも有用ですが,検診でペプシノゲンが異常で内視鏡検査をされた人の中から,多くの早期がんが発見されているのも,大きな特徴といえます.平成17年度はペプシノゲン検査のみを行った70歳の受診者1452名の中から9名がんが発見され,それも全員が早期がんであったという結果はこの有用性が示されたものと思っています.

「精検受診率」とは?

これも耳慣れない言葉かもしれません.これは「精密検査が必要である」と判定された方のうちの何人が精密検査を受けたかという率を示したものです.当然この割合が高ければ高いほど,より多くのがんが発見されるということになり,検診の精度を左右する重要なものです.しかし,精密検査が必要と言われた方すべてが精密検査を受診されるとは限りません.内視鏡が怖いとか,去年も受けたから,などの理由で受けない方もいます.でもそこで重要なことが,かかりつけ医がより丁寧に,相手が納得するよう説明し精密検査を受けていただくことにあります.現在のわれわれが行っている胃がん検診の精検受診率は約88%程度で,まだまだ満足できる数字ではありませんが,今後もこの全員が納得して精密検査を受けるようになるよう,受診者に説明していくことが必要であると思っています.

「胃がん検診精度管理委員会」とは?

この委員会は,金沢市医師会長を委員長とし,レフリー6名と検診担当理事2名に加え,金沢市のこの検診を担当している担当部・課の,部・課長を加え構成されている委員会です.この会は必要に応じて年に数回開催され,文字通り検診精度の検証はもちろん,検診の有用性などについても検討しています.先ほど少しおはなしした内視鏡検診の導入に関しても,この委員会で論議している問題で,今後,検診における内視鏡フィルムの二次読影の効率のいい方法などについて十分検討されたうえで,近い将来,精度の高い内視鏡検診としてまたおはなしできればと思っています.

金沢市医師会としては金沢市から委託された個別検診事業について,胃がん検診に関しては今後もこのシステムをさらに精度の高いものにするべく努力していくとともに,内視鏡検診の導入など,さらなる有効な検診方法についても検討していきたいと考えています.

図  表

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