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中国支部

がん診療におけるFDG-PET検査の有用性について

加地 充昌(岡山画像診断センター)


PET(Positron Emission Tomography;陽電子放出断層撮影)検査は、心臓、脳、腫瘍などの働きを画像としてとらえ、病気の原因や病状を的確に診断する検査法のことです。PETでは、陽電子放出核種(11C,18Fなど)で標識された放射性薬剤を用います。11Cは有機化合物の構成元素として、18F(半減期110分)は水素や水酸基に置換して様ざまな薬剤に標識されます。これらの核種は、positronという陽電子を放出し、近くの電子と結合して2本の511keVのガンマ線を180度方向に放出します。これを対向する2個の検出器で検出し画像を再構成するのがPET検査です。なおPET検査では院内に医療用サイクロトロンおよび薬剤自動標識合成装置が必要となりますが、現在では18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)に限り商用での薬剤供給が行われています。

CTやMRIは形態を見るのに優れていますが、PET検査ではブドウ糖代謝でがんを見つけます。がん細胞が、正常細胞に比べ3~8倍ブドウ糖を取り込むためで、この検査薬を18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)といい、副作用はほとんどありません(図1)。がんの糖代謝については1930年代にノーベル賞を受賞したWarburgが癌では解糖が特異的に亢進していると発表したのに始まります。これは癌の細胞膜ではグルコーストランスポーターが増加し、解糖系の酵素活性が亢進するためです。FDGは細胞膜のグルコーストランスポーターにより細胞内に取り込まれリン酸化されます。しかし、FDG-6リン酸はグルコース-6リン酸と違いそれ以上解糖系で代謝されず細胞膜も透過できないため細胞内に蓄積されます。また、FDGはグルコースと違い腎から排泄される薬剤で生理的に脳に集積するほか、心筋や尿路以外には高い集積はあまり見られません。このことも全身の悪性腫瘍を検出するのに適した薬剤です。FDGの腫瘍集積の特徴は、増殖速度の速い、悪性度の高い腫瘍ほど高い集積を呈すること、また未分化な腫瘍ほど高く高分化型では集積が低下します。粘液が多く細胞密度が低い腫瘍でも集積が低下する傾向にあります。

2002年4月に本邦においてもFDG-PETが12種類の疾患に保険適応が認められ臨床に使用できるようになりました。現在では、食道がん、子宮がん、卵巣がんが追加されています。またFDGは、アルツハイマー型痴呆、炎症、サルコイドーシス、動脈硬化、その他の悪性腫瘍(骨腫瘍など)の評価にも有用とされており今後の保険適応拡大が期待されています。

FDG-PET検査では、がん診療では次のような目的で使用されています。

  • 1. 良悪性の鑑別
  • 2. 癌の病期診断:PET検査により3割前後の症例に治療方針の変更が見られたとの報告があり、がん診療においてはなくてはならない検査となってきました。
  • 3. 再発診断:形態画像より早期に発見でき、非常に有用です。
  • 4. 治療効果判定(保険適応外)
  • 5. がん検索(自費)

それでは、がん診療におけるFDG-PETの良い適応はなにでしょうか?
「CTやMRIなどの形態学的画像診断で診断しきれない病変を描出することが最大の特徴」
・形態学的画像診断で指摘困難,確定困難な場合
・広範囲を撮影でき,遠隔転移,予期せぬ病変検出
・腫瘍マーカーが上昇するが CT等で再発の診断困難
などが考えられます。

一般的に機能的変化は形態的変化より先に始まるため、CT,MRIよりも先にFDG-PETで発見できる可能性が高いのです(図2)。がん細胞の発育プロセスで見ればPETでは1センチ前後の大きさでがんを発見できる可能性が高く完治を期待できます。

さて、がん診療におけるFDG-PET検査の長所は、(1)短時間(約2時間)で全身をチェックできる (2)存在診断と同時に進行度診断が可能 (3)肉体的苦痛が少ない (4)CTやMRIと組み合わせて相乗効果が期待できることなどがあります。また、短所としては (1)胃がん、腎がん、膀胱がん、尿管がん、前立腺がん、肝がんなどは検出感度が低い。 (2)サイズが小さいもの(数ミリ大)や粘膜内に限局する癌は見つかりにくい(PET装置の分解能は現在4ミリほどである) (3)良性でも陽性を呈することがある (4)検査費用が高額(3割負担で約3万円) などがあります。

FDG-PET検査は血糖値に影響を受けるため、最低でも4時間以上の絶食が必要で、FDG投与前の血糖値は150mg以下が望ましい。絶食が不十分ですと筋肉などに集積し異常がわからなくなる場合があります。インシュリンや血糖降下剤を使用している場合も注意が必要ですので主治医やPET検査機関へ問い合わせる必要があります。検査時間は、FDG静脈注射後約2時間(安静が60~90分、撮影が20分前後)は必要です(図3図4)。正常のPET像(MIP像)では、脳や扁桃腺、心臓などは強く描出され(心臓は弱い場合もある)、排泄経路である腎や尿管、膀胱も強く描出されます(図5)。また、胃や腸管なども場合により強く描出されることがあります。

この代謝イメージにCTの形態イメージを融合したものがPET/CT検査であり正診率が向上します(図6図7)。それは、PET単独では形や場所を見るのが苦手なためで、形態診断に優れるCTを加えることでさらに正確な診断が可能となるためです。特にがん検診では、CTのみで早期肺がんや甲状腺がんを発見する場合もあります。このため最近では、ほとんどの医療機関がこのPET/CTを導入しています。PET/CT融合画像はカラーイメージであり強い集積は赤く描出されわかりやすくなっています。

保険適応は、悪性腫瘍として(1)頭頚部がん(2)肺がん(3)乳がん(4)大腸がん(5)膵がん(6)悪性リンパ腫(7)悪性黒色腫(8)原発不明がん(9)食道がん(10)子宮がん(11)卵巣がん(12)脳腫瘍(13)転移性肝がんです。ただし、「他の検査・画像診断により癌の存在を疑うが、病理診断により確定診断が得られない患者に使用する。あるいは病期診断、転移・再発の診断が確定できない患者に使用する。」と厳しく制限されています。保険を使用するには医師の紹介状が必要です。紹介状がなければ自費となります(図8図9)。

症例1 検診発見の食道がん:管腔臓器の局所評価はバリウム検査や内視鏡検査が優れており、PETでの早期発見は困難とされています。この患者の症状は、喉の軽いつかえ感のみでPET検診で食道がんが発見されたわけですがすでにリンパ節転移が見られました。PETでは食道筋層浸潤があれば100%描出されますが、粘膜層に留まる場合は20%以下の検出率です。したがって、PET陽性の食道がんは進行がんの可能性が高い。
(図:症例1-1症例1-2症例1-3症例1-4症例1-5

症例2 検診発見の大腸がん:大腸がんには、一般的にFDGが強く集積します。但し、その多くが大きさは1.5cm以上であり、良性のポリープでも集積が見られます。
(図:症例2-1症例2-2

症例3 直腸がん術後再発:直腸がんの転移が明瞭に描出されており、他の検査と比べ有用性が高い。腹膜転移は、CTでは腸管との鑑別が難しいがPETでは明瞭です。また、筋肉転移はCTでは筋とのコントラストが悪いためしばしば見落とされるがPET検査では一目瞭然です。
(図:症例3

症例4 直腸がん術後局所再発:術後の局所再発は、線維性瘢痕との鑑別が難しい場合が多くPET検査が有用です。CTやMRIで見落としやすい再発もPETであれば容易に検出可能です。
(図:症例4

症例5 膵頭部がん:膵がんは、FDGの集積が強い腫瘍ですが小さい場合は検出率が低下します。しかし、肝転移や播種の検出に有用です。さらには膵がんと腫瘤形成性膵炎との鑑別にも役立つとの報告があります。また、膵臓にはIPMT(intraductal papillary mucinous tumor)というムチン産生嚢胞性腫瘍が存在しますがこの悪性部分にFDGが集積し手術適応の判定にも有用といわれています。
(図:症例5

症例6 胃がん術後の高CEA血症:消化器がんの術後に腫瘍マーカーが上昇し、再発が不明な場合はPETが非常に有用とされています。この患者は、再発でなく肺がんが発見されていますが意外な部位に再発が発見されることもありPETが有用です。
(図:症例6

症例7 胃がん術後再発(保険適応なし):胃がんには保険適応がないため自費でのPET検査となった症例ですが、再発が明らかです。但し、胃壁には生理的集積が強い場合があり胃癌との鑑別が難しく、検出率も60~75%程度です。特に早期胃がんの検出は困難です。ところが、この症例のように転移巣が高集積を呈する場合が多いため術後の転移や再発診断に有用であるとされています。
(図:症例7

症例8 小腸GIST術後(保険適応なし):GIST(Gastrointestinal stromal tumor)の再発にPET検査が有用であった症例です。GISTは消化管原発の間葉系腫瘍の大部分を占め悪性の可能性を持つと考えられています。FDG-PET検査での検出率90%以上と優れていますし、GISTの悪性度を予測したり、治療効果の判定にも役に立ちますが保険適応ではありません。
(図:症例8

【まとめ】

-がん診療におけるFDG-PET/CTの役割-
1. 良悪性鑑別: 有用だが最終的には組織学的検査が必要。
2. 病期診断: 有用であるが、小病変の偽陰性や炎症による偽陽性が問題。
3. 治療効果判定: 非常に期待できる。ただし、治療による集積の修飾が問題。
  偽陽性:手術後1-2ヶ月、RT後3-6ヶ月は間を空ける必要があります。
  偽陰性:化学療法直後から1ヶ月間は判定が難しいとされます。
4. 再発診断: 最も有用な情報を得ることが多い。
5. がん検診: 発見のインパクトは大きい。発見率は1-2%(従来の検診は0.1%)との報告が多い。

 

以上のようにFDG-PET検査はがん診療において有用性が高くなくてはならない検査となってきていますが、長所や短所を十分理解したうえで利用する必要があります。

図  表 

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図1

図2

図3

図4

図5

図6

図7

図8

図9

症例1-1

症例1-2

症例1-3

症例1-4

症例1-5

症例2-1

症例2-2

症例3

症例4

症例5

症例6

症例7

症例8