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北陸支部

からだの外から癌を見つける:PET-CTってなに?

木村浩彦(福井大学放射線医学)
土田龍郎(福井大学放射線医学)


【FDG-PETとその検査法について】

 消化器は、口腔から肛門まで連続する消化管と肝臓・胆嚢・膵臓といった実質臓器から成っています。消化管では胃カメラ・大腸ファイバーといった内視鏡を使った検査でからだの中から病気を見つけますが、肝臓・胆嚢・膵臓などではCT、MRIや超音波検査でからだの外から病気を見つけます。近年、「からだの外から病気を見つける」検査法として、新たにFDG-PETが加わりました。
 FDG-PETとは、FDGというブドウ糖に似た薬を注射し、癌細胞に取り込まれるFDGの有無や広がりをPETという装置で見る検査です。なぜ、FDG-PETで癌が見つかるかということですが、癌細胞は正常細胞と比べ、ブドウ糖(FDG)を3-8倍多く取り込みます。したがって、正常組織よりもFDGが多く癌に集まっている様子がFDG-PETでは観察されるわけです。図1では、肺癌に多くのFDGが集まり、黒く写っているのがわかります。
 FDG-PET検査は図2のような流れで行われます。FDGはブドウ糖に似た薬で注射前に血液中にブドウ糖がたくさんあるとFDGが癌にうまく集まらなくなり、正しい診断ができなくなる可能性があります。よって、FDG注射前少なくとも4時間は食事をしたり、糖分の入った飲み物を摂ったりすることはできません。FDG注射後は約1時間安静にして、FDGが体内に広がるのを待った後、PETで約30分間の撮影を行います。私たちの施設では、撮影にPET-CTというPETとCTが一体型になった装置を使用しており、この装置を使うとPETとCTの両方の検査が1つの装置で行えるわけです。PET-CTを使うことによる利点ですが、FDGが集まっている場所がCT上に表示されるので、病変の場所を正確に評価できるということです(図3矢印)。

【消化器癌におけるFDG-PETの役割】

 現在、保険診療でFDG-PETが認められている消化器癌は、食道癌、大腸癌、膵癌、転移性肝癌の4疾患のみで、消化器癌の中で最も頻度の多い胃癌には保険診療としてのFDG-PET検査は認められていません。保険適応疾患のうち、食道癌、大腸癌については消化管の癌なので、内視鏡で直接覗いて診断することがほとんどです。また、膵癌や転移性肝癌についてもその大きさや数、周辺への広がりに関してはCT、MRIで評価することが可能です。したがって、消化器疾患におけるFDG-PETの役割は治療前に転移の有無を評価したり、治療後の経過観察中に再発病変を見つけたりすることに期待をされていると考えています。以下にFDG-PETが役に立った症例を示します。
 図4は膵癌治療前後にFDG-PETを行った患者さんの画像です。治療前には膵癌にFDGが強く集まっているのがわかります。抗癌剤による治療後には膵癌へのFDGの集積が弱くなり、治療効果があったことがわかりますが、リンパ節への転移(○で囲んだ部分)が出現しました。
図5は大腸癌手術後に腫瘍マーカーの上昇を認め、再発が疑われた患者さんの画像です。CTでは明らかな転移は見つからず、FDG-PETを行ったところ、肝臓の辺縁に強いFDG集積が見られたため、MRIで詳しく検査すると、肝転移が見つかりました。
 図6は悪性黒色腫という皮膚の癌で治療後に経過観察でFDG-PETを行った患者さんの画像です。肝臓の下に強いFDG集積があり、CTでも胃の中に病変が認められたため、内視鏡を行ったところ、胃癌であることが判明しました。癌は一人の患者さんに1種類しか発生しないというわけではなく、また、再発や転移はCTなどで見つけにくい、思わぬところに発生することがあります。こういった病変を拾い上げることができるのがFDG-PETの利点です。
 FDG-PETの「思いがけない病変を見つけることができる」という利点は近年では、がん検診、いわゆる人間ドックにも広く用いられつつあります。これは、注射1本で検査できるという手軽さに負うところが大きいと思いますが、私たちの施設でもFDG-PETを用いたがん検診を行っています。検診で発見された消化器癌の症例を示します(図7)。右下腹部にFDGが集まっており、CTと重ねると大腸への集積とわかります。その後、内視鏡を行った結果、盲腸癌と判明しました。

【FDG-PETは万能か?】

 ここまで、消化器癌におけるFDG-PETの利点を述べてきましたが、FDG-PETは万能ではなく、欠点もあります。
(1)FDG-PETは小さな病変の検出が苦手
かつては、「数ミリの癌が見つかる!」といったセンセーショナルな宣伝もありましたが、正しくは「見つかることもある」という程度で実際には見つけられないことのほうが多いです。特に消化管においては、内視鏡で小さな病変を的確に見つけることができるので、消化管の病変に対してはFDG-PETはあまり役に立たないことのほうが多いです。
(2)「FDGが集まれば必ず癌」とは限らない(その逆もあり)
これはFDGという薬の宿命ともいえる弱点ですが、FDGはブドウ糖に似た薬ということで、ブドウ糖を使う細胞ならば、癌でなくても集まります。強い炎症があるとそこにはFDGが多く集まることが知られています。また、多くの癌では正常細胞よりもブドウ糖を多く使うので、癌にFDGが集まるのが観察されるのですが、ゆっくりと発育するような癌ではFDGがあまり集まらないことも知られています。また、下痢をして、腸管の動きが活発になると、FDGが腸管の壁に集まることもあり、FDGの集積だけで癌かそうでないかということはいえなくなります。図8左は検診を受けた方で、大腸がFDGの局所的な集積が見られました。癌が疑われたため、内視鏡を行いましたが、憩室という腸のくぼみが炎症を起こしているだけで癌ではありませんでした。右の図も検診の方で、朝から下痢をしているとのことでした。大腸全体にFDGが集まっていますが、下痢によって腸管の動きが強くなっているためと考えました。

【おわりに】

 消化器癌に対する検査の選択についてまとめました(図9)。消化器癌におけるFDG-PETは適応疾患が限られており、また、FDG-PET特有の弱点もありますが、それと同時に他の検査では得がたい情報が得られるという利点もあります。FDG-PET検査を希望される場合には、その利点と欠点をご理解いただいた上で、主治医にご相談いただければと思います。

図  表 

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図1

図2

図3

図4

図5

図6

図7

図8

図9