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関東支部

検診で異常を指摘されたらどうしますか?-肝機能検査-

柿崎 暁(群馬大学大学院病態制御内科学・肝臓代謝内科)


【はじめに】

市町村の検診や人間ドックで、GOT・GPT・γGTPなどの肝機能検査の異常を指摘されることがあるかと思います。今回は、検診での肝機能検査の意味と検診で指摘されることの多い肝臓の病気について説明します。

【1.検診(人間ドック)の肝機能検査項目について 】

肝臓は、右の上腹部にある約1-1.5kgの臓器で、アルブミンなどのタンパク合成、アンモニア・薬物・アルコールの代謝・解毒などのさまざまな働きをしています。人間ドックで検査される主な血液検査のうち、肝臓に関連するものを(図1)に示しました。これらには、直接、肝臓に関連する検査と、肝臓以外の検査であっても肝臓の状態を反映する検査があります。血液検査以外にも、腹部超音波検査(エコー検査)や胃カメラ検査も肝臓に関連があります(図2)。肝炎ウイルス検査 (HBs抗原 、HCV抗体)が含まれている人間ドックもあります。

次に、肝臓に関連する検査で代表的なものを、個々に説明します。
■ トランスアミナーゼ (GOT(AST), GPT(ALT))(図3)
肝臓の細胞(肝細胞)に含まれており、「肝逸脱酵素」とも呼ばれ、肝細胞が壊れた時に血液に出てくる酵素です。GOT, GPT(特にGPT)は他の臓器にあまり含まれていないため、その血液中の高さは肝障害(肝細胞の破壊)、肝臓の中で起きている炎症の激しさ(活動性)を反映します。

■ アルカリフォスファターゼ(ALP)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ (γGTP)(図4) 「胆道系酵素」とよばれ,胆汁の流れが妨げられると血液中で増加します。γGTPは細胆管の障害で上がり、アルコール性肝障害や薬剤性肝障害などで高くなりやすい酵素です。γGTPの上昇=アルコールの飲みすぎと思っている人もいるかと思いますが、薬、アルコール以外の脂肪肝などでも高くなります。ALPは、肝臓以外にも骨に含まれており、骨の病気や骨が成長期にある子供でも上がることがあるので注意が必要です。

■ ビリルビン(Bil)
黄疸の原因になる黄色い色素です。古くなった血液が壊されて作られ、肝臓で代謝され、胆汁に排泄されます。肝臓での代謝や胆汁への排泄の低下で上昇しますが、血液疾患、体質性黄疸、肝細胞障害、胆汁うっ滞など様々な原因で数値が高くなります。

■ 乳酸脱水素酵素(LDH)
GOTやGPTと同じ逸脱酵素で、細胞の破壊で数値が高くなりますが、肝臓だけでなく、血液、肺、筋肉、心臓など色々な組織に含まれており、肝臓以外の病気でも異常値が出ることもあります。

■ 総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)、コリンエステラーゼ(ChE)、総コレステロール(T-Cho)
肝臓で作られるものを測定し、肝臓がものを作り出す力(合成能)を評価しています。肝臓は予備力の大きい臓器で、機能がかなり落ちていないと、数値が低下しないこともあり、身体のその他(肝臓以外)の代謝状態による変動も受けます。

■ チモール(TTT)、クンケル(ZTT)(膠質反応)
血液中の免疫グロブリンの量を反映します。慢性肝炎では、しばしば免疫グロブリンの量が多くなるので、補助的な診断に使われます。血液の病気や膠原病など、免疫グロブリンの状態が変化する状態では、数値が変動するので、これが高いからと言って、必ずしも肝臓病とは言えません。特に、単独で数値が高い場合には肝臓病以外の病気との区別が必要です。

■ 血小板数(Plt)
慢性肝疾患が進行し、脾臓が大きくなると、脾臓で血小板が壊され、少なくなるので、慢性肝炎から肝硬変への進行などの大まかな指標になることがあります。

■ 画像診断
人間ドックで主に行われるのは、腹部エコー検査ですが、それ以外にもCT検査、MRI検査などが画像検査に含まれます。何がわかるのかというと、肝臓のかたち、構造、内部の状況をみることにより、脂肪の沈着や慢性肝障害・肝硬変の有無などがわかります。腫瘍の有無(造影剤も使えば腫瘍の血流や性質をみることも出来る)、脾臓の腫れ、腹水の有無、その他の臓器の異常の有無なども見ています。

■ 内視鏡検査(胃カメラ)
胃カメラは、胃がんや胃潰瘍のための検査であって、直接は肝臓には関係ないと思われるかもしれませんが、肝硬変や門脈圧亢進症などの肝臓の病気では、食道静脈瘤や特徴的な胃炎(門脈圧亢進性胃症)を起こすことがあるので、肝臓の病気が発見されることもあります。

以上、人間ドックで行われる肝臓関連の検査について簡単に述べました。
どの検査にも固有の特徴があり、反映されている肝臓の状態は異なるので、一つの検査だけでは判断できず、総合的に判断する必要があります。肝臓以外の臓器の病気によって変動することも多いので、肝機能検査の異常すなわち肝臓の異常とはいかない場合もあります。また、数値の高さと重症度は必ずしも一致せず、一度の検査ではなく、時間経過の中で判断しないといけない場合があります。従って、自己判断せず、人間ドックで肝機能異常をチェックされたら、内科(消化器内科、肝臓内科)で相談してください(図5)。

【2.肝臓病にはどんな病気があるの?】
肝臓の病気を大きく分けると、急性肝障害(急性肝炎など一時的な肝障害。慢性化する場合もある)、慢性肝障害(慢性肝炎や肝硬変など、肝障害が長く続くもの)、肝腫瘍(良性腫瘍(血管腫など)、悪性腫瘍(肝細胞がん、肝内胆管癌など))の3つに分けられます。急性肝障害では、症状が出やすいため、医療機関を受診して指摘されますが、検診でチェックされることが多いのは慢性肝障害です。
 慢性肝障害のうち、人間ドックで指摘される多くは、アルコール性肝障害、脂肪肝(アルコール性、非アルコール性)などの生活習慣病に関連した肝臓病です。生活習慣病に関連した肝臓病は、後で詳しく述べますが、慢性の肝臓病のうちで、病気の進んだ慢性肝臓病や肝硬変の原因の主なものを(図6)に示します。その原因は、ウイルス性肝炎(B型、C型肝炎)が最多で、約8割を占めます。人間ドックの項目に入っている場合も多いですが、入っていない場合は、肝炎ウイルス検査 (HBs抗原、HCV抗体)をして、陽性ならば内科(消化器内科、肝臓内科)で相談してください(図7)。次の項目では、生活習慣病と肝臓の病気について説明します。

【3.生活習慣病と肝臓の病気について】
病気の原因は、「遺伝要因」(加齢や遺伝など)、「外部環境要因」(病原体(ウイルス、細菌)や有害物質、ストレスなど)、「生活習慣要因」(食習慣や運動習慣など)に大別されます。

 生活習慣病は、主に生活習慣(食事習慣、運動習慣、肥満、喫煙、飲酒など)が原因(生活習慣要因)であると考えられている病気の総称(昔は成人病と呼ばれていた)です。 一般に30~40歳代以上の世代から発症しやすくなり、その発症に生活習慣が深く関わると考えられています。日本人の死因の3分の2が、生活習慣病(成人病)で、良くない生活習慣は、ひとつの病気だけでなくいろいろな病気の原因になります。生活習慣病の原因としては、たばこ、お酒の飲み過ぎ、食生活(肥満、栄養の取り過ぎ)、ストレス、塩分の取り過ぎ、運動不足などが挙げられます。日本生活習慣病予防協会が生活習慣病に含める病気としては、脳出血、脳梗塞、高血圧、心筋梗塞、慢性気管支炎、肺気腫、肺扁平上皮がん、大腸がん、アルコール性肝炎、糖尿病、高脂血症、痛風、歯周病があります。米国の医学者であるBreslowは、7つの健康習慣を提唱(図8)し、これらを実施している数が多い人ほど疾病の罹患が少なく、寿命も長かったことを明らかにしました。

生活習慣病による肝臓の病気としては、アルコール性(アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変)と非アルコール性(脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎)のものがあります。

■ 脂肪肝
肝臓に脂肪(中性脂肪)が過剰に沈着する病気です。ほとんどが無症状で、人間ドックで発見される肝機能異常で一番多い病気です。原因としては、アルコール性と非アルコール性(肥満、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症(痛風)、高血圧などを合併することが多い)に大別されます。脂肪肝は、栄養過多でも低栄養でも起こりますが、日本では栄養過多によるものが多いです。定期検診では5人に1人は脂肪肝を指摘されており、全体的に見ると男性が多いです。しかし、女性は、閉経後に脂肪肝になる人が増えるので、注意が必要です。女性ホルモンには抗脂肪化作用があり、閉経後分泌量が減って脂肪肝になり易くなるためです。
 脂肪肝になりやすい人は、アルコール類を良く飲む人、洋風料理、揚げ物など脂肪の多いものが好きな人、甘いものを好んで食べる人(ジュース類、缶コーヒーなど多量に飲む)、野菜嫌いの人、運動をあまりしない人、太っている人、糖尿病の人などが挙げられます。血液検査では、GOT(AST)、 GPT(ALT)、ALP、γ-GTP、総コレステロール、中性脂肪などに異常値が出ることがあります。診断には、エコー検査が有効です。脂肪肝自体が、生命に影響することはありませんが、脂肪肝のある人は脂肪肝のない人と比べて、心臓病や糖尿病になる確率は高く、症状がなくても放置せず、良い生活習慣を心がける必要があります。

■ アルコールと肝臓病
飲酒によって体内に入ったアルコールの90%以上は肝臓に運ばれて処理されます。アルコールは、肝臓のアルコール脱水素酵素(ADH)、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)などの働きで、アセトアルデヒドを経て、酢酸や炭酸ガス、水に分解されます(図10)。個人差はありますが、日本酒1合の代謝には約3時間半かかるといわれています。「健康日本21」の示す「節度ある適度な飲酒量」は、アルコール量で、1日20グラム(2ドリンク)、1週間で140グラム(14ドリンク)以下とされています(女性ではさらに少ないほうが望ましい)。1日の適切な飲酒量は、ビールで中瓶1本(500ml)、日本酒では1合弱(160ml)、焼酎ではコップ半分(100ml)、ワインではグラス2杯弱(200ml)程度とされています(図9)
 お酒が原因の肝臓病としては、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変などが挙げられます。市民公開講座では、概略を説明しましたが、紙面の都合上、本稿では省略しますので、他の市民公開講座を参照して下さい。
 酒の上手な飲み方としては、(1)一日のアルコール量は20g以内(日本酒1合弱)、(2)週に2-3日は休肝日、(3)空腹で酒を飲まない、(4)カロリーのとり過ぎに注意、(5)アルコール濃度の高いものは薄めて飲む、(6)できるだけゆっくり時間をかけて飲む、(7)チャンポン、はしご酒、深酒は避ける、(8)二日酔いになったら迎え酒はしない、などが挙げられます。

【4.お酒を飲まなくてもなる肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)について】
「非アルコール性脂肪肝炎」Nonalcoholic Steatohepatitisの略です。お酒を飲まないのに(Nonalcoholic、非アルコール性)、お酒を飲んだ時と同じような脂肪性肝炎(Steatohepatitis)を起こします。脂肪肝のほとんどの人は、それ程病気が進みませんが、約1割の人は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)で、肝硬変や肝癌へ進行することがあります。欧米で多かった病気ですが、最近日本でも増えてきました。肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病を合併することが多いです。診断は、(1)非飲酒者であること(アルコール性肝障害にならない程度の、時々の飲酒者を含む。日本酒なら一合弱/日、ビールなら大瓶一本/日以下)、(2)肝生検で脂肪性肝炎を示すこと、(3)他の肝障害の原因を認めないこと、により診断されます。
 肥満、糖尿病、代謝異常、栄養の過多・偏奇、薬剤などの遺伝的素因、環境因子、生活習慣要因から脂肪肝となり(ファーストヒット)、そこに炎症や線維化を引き起こす刺激(セカンドヒット)が加わり、脂肪性肝炎から肝硬変・肝がんへと進展するとされています。(市民公開講座では、詳細も説明しましたが、紙面の都合上、本稿では省略しますので、他の市民公開講座を参照して下さい。)

【まとめ】
検診でチェックされることの多い肝機能検査の意味と肝臓の病気について説明しました。肝臓をいたわる生活の注意(図11)としては、(1)異常があったら専門医を受診する、(2)栄養をバランスよく、適量とる、(3)余分な薬やお酒は飲まないことです。肝機能に異常がみられたら、専門医に受診して原因を知ることが大切です。もし、ウイルスによるものなら専門医の指示に従い定期的な検査や治療を受けましょう。多種類の食品をバランスよくとり、また適量を心がけ肥満を予防することも大切です。薬剤やお酒は肝臓で分解されます。必要以上に薬やお酒を飲むと、それだけ肝臓に負担をかけることになります。
 肝臓は、「沈黙の臓器」と言われるように進行しないと症状が出ません。逆に症状が出てからでは遅いので、検診や健全な日常生活に心掛け、健康な肝臓を維持して下さい。

図  表 

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図1

図2

図3

図4

図5

図6

図7

図8

図9

図10

図11