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健康情報誌「消化器のひろば」No.11

健康情報誌「消化器のひろば」No.11

気になる消化器病 腸内フローラの異常(ディスバイオーシス)

腸内フローラが話題です。ヒトは腸内フローラとの共生関係により健康を維持していますが、ライフスタイルなどの様々な理由によってフローラに乱れが生じます。この乱れを「ディスバイオ−シス」と呼びますが、消化管の病気だけでなく、メタボリック症候群などの全身の病気にも関わっています。

腸内

 ヒトの腸内には約1,000種類、100兆個以上の細菌が棲み着いています。一般的には「腸内細菌」と呼ばれてきましたが、腸内細菌の集まりを叢(くさむら)や花畑(フローラ)になぞらえて腸内細菌叢あるいは腸内フローラなどと呼んでいます。宿主であるヒトの健康状態および様々な病気と密接に関わっていることが明らかになりつつあり、腸内フローラという言葉をよく見たり聞いたりするようになりました。

 酸素が嫌いな腸内フローラにとって、ヒトの大腸内は酸素濃度が極めて低く、ヒトが消化できないような食物繊維をエサにして生きられる好都合な環境なのです。ヒトにとっても腸内フローラは排便活動や消化・吸収といった腸管機能に大きく貢献しています。この共生関係を良好に維持することで、上皮細胞に適度な刺激を与えバリア機能を高め、腸管免疫細胞による免疫機能がきたえられます。この共生関係の乱れがディスバイオ−シスであり、多くの疾病との関連性についての研究が進行中です。

 腸内フローラを遺伝子解析によって検出するメタゲノム解析が進歩し、人種による腸内フローラの相違が解明されつつあります。日本人は独特で、食物繊維をエサとして発酵反応を促進する腸内フローラが多く、人体に有用な代謝物を生み出しています。欧米人と比べ、酢酸を産生する腸内フローラやビフィズス菌が多いことも日本人の特徴です。

 腸内フローラは出生後2~3年で安定しますが、その割合はその後のライフスタイルで大きく変化します(図)。なかでも食事の影響は大きく、食物繊維の不足、脂肪の過剰摂取は悪玉菌・善玉菌の増減を招き、ディスバイオ−シスに陥ります。食品添加物、消毒剤、PM2.5などのナノ粒子、抗生物質などの環境因子にも注意が必要です。一方、ポリフェノール、抗酸化剤、乳酸菌などがディスバイオ−シスを改善させるという報告が注目されています。ディスバイオ−シスが原因となる典型的な病気は、抗生物質の投与による偽膜性大腸炎ですが、健常人の糞便の移植によりディスバイオ−シスが改善し、病気の治療につながったことが報告されています。

 「腸内フローラの異常(ディスバイオ−シス)」で必ずしも症状が出るとは限りませんが、便通やおならの臭いの変化などに気づいたら主治医に相談しましょう。ライフスタイルを見直すよい契機となります。

表 腸内フローラを決める要因

京都府立医科大学
消化器内科学 准教授

内藤 裕二

京都府立医科大学 消化器内科学 准教授 内藤 裕二

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