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健康情報誌「消化器のひろば」No.12

健康情報誌「消化器のひろば」No.12

FOCUS
高齢化社会における消化器病

ぜひ、一般住民健診やがん検診の受診を。
早期発見は予防とともに大変重要です!

 どなたでも下痢や便秘、腹痛や胃もたれなど、年に何回かは経験されることと思います。これらの症状が、いつもより長く続く、あるいは我慢できないほど強くなると「病気」と判断されます。そして医療機関を訪れ治療を受けることになりますが、それほど消化器病はごく一般的な病気なのです。

 さて、本邦では高齢者人口がますます増加しています。小生の外来でもその約半分は70〜90歳代の患者さんです。そして、高齢者の診療は若い方と同様ではありません。すなわち、加齢とともにあらゆる臓器、器官の機能が低下してきます。そこに何か病気などの負担が加わると容易に身体の生理的平衡がくずれ、重症化してきます。つまり、高齢者の診療は特別な配慮が必要となります。さらに、高齢者に対する検査や治療についても、全身状態や合併症の有無、認知状況や家族の援助など、診療判断は慎重でなければなりません。当然、そこには倫理的な側面も存在しています。具体例を2件示しましょう。

1)便潜血陽性の高齢者
 2005年、大腸がん検診ガイドラインによりその死亡率減少効果が示され、行政により全国的に便潜血検査が行われています。ここで便潜血陽性となった場合、次に身体への負担が大きい大腸内視鏡検査を行うべきか、自覚症状もないので経過観察とするか、判断に迷う場合が多々あります。

2)早期胃がんでも外科手術が困難な高齢者
 せっかく早期で発見された胃がん患者さんでも、年齢、合併症その他で手術ができない場合があります。その場合、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という治療法がありますが、本法は、出血、穿孔(胃壁に穴が開くことです)などの偶発症が懸念されます。手術ができない患者さんですので、偶発症が生命に関わる可能性が生じます。治療選択に苦慮するわけです。

 このように検査、治療法の選択判断が難しいのも高齢者消化器病診療の特徴です。

 ところで、診療判断を高齢者という年齢だけで行っても良いのでしょうか? 年齢より若い方、歳をとっている方、いろいろです。そこでComprehensive Geriatric Assessmen t (CGA:高齢者総合的機能評 価)があります。患者さんの①身体機能(食事、排泄、買い物など)、② 合併症、③ 認知機能、④ 栄養状況、⑤ 精神・心理的側面、⑥ 社会的側面(居住形態、介護など)、⑦ 服薬状況、で高齢者を総合的に評価し、診療に当たるもので、身体機能を正確に評価され、一番適した治療法を施される、そのような時代になってきています。

 最後にお願いです。ぜひ、全国で行われている一般住民健診、胃がん・大腸がんなどのがん検診を受診してください。病気の早期発見は予防とともに大変に重要です。早めに治療を受ければ完治の可能性が高まります。元気にお過ごしいただき、「健康長寿」であることをお祈りいたします。

佼成病院 消化器内科 副院長・内科部長
(日本高齢消化器病学会 理事長)

高橋 信一

高橋 信一 近影

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