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健康情報誌「消化器のひろば」No.13

健康情報誌「消化器のひろば」No.13

知っておきたい治療薬 肝がんの新しい薬

肝がんの新しい薬

ソラフェニブという分子標的薬が2009年6月に日本で承認されて以来、肝がんに対する薬剤はこれ一剤のみという状態が約8年間続きました。しかし、2017年、2018年と立て続けにソラフェニブと同様の一次治療薬のレンバチニブと二次治療薬のレゴラフェニブが使用可能となり、肝がんの薬物治療も新しい時代に入ったと言えます。

肝がんの新しい薬

 分子標的薬は従来の抗がん剤と違って、がんの進行や増殖に関係する分子をピンポイントに抑えることにより、抗がん効果を発揮し、ひいては生命予後を延長するお薬です。具体的には、肝臓がんはがんが大きくなるときに新しい血管を作る(血管新生)ことによって栄養を補給し、また増殖を促進するようなシグナルを伝えてがんが大きくなったり転移します。2009年6月に承認されたソラフェニブは血管新生を抑制するだけでなく、増殖シグナルも抑制する薬剤です。しかしながら、腫瘍が縮小する効果には乏しく、目に見えて腫瘍が壊死に陥ったり縮小する効果は見られませんが、増殖・増大・転移するのを防ぎ病気の進行を遅らせることにより、生存を延長させる効果があります。ただし、その効果はある一定期間で耐性を獲得しソラフェニブが効かなくなり、また増殖・増大するようになります。

 このときの二次治療薬として開発されたのがレゴラフェニブというお薬です。このお薬はすでに大腸がんや消化管間質性腫瘍(GIST)にも承認が得られております。ソラフェニブとレゴラフェニブは構造式がとても似ているため、副作用も非常によく似ています。レゴラフェニブのほうが、効果も強い代わりに副作用も強いと言えるでしょう。ソラフェニブとレゴラフェニブの共通の副作用として、手足がヒリヒリしたり潰瘍ができるなどの手足症候群や下痢、高血圧、食欲不振、体重減少などがあります。ただし、このレゴラフェニブというお薬はソラフェニブを一定期間、一定量を飲めた人で、CTなどの画像検査で腫瘍が増殖して効かなくなったときの人だけが服用できる二次治療薬です。ソラフェニブが副作用で飲めなかった人は対象外となります。

 さらに2018年3月、ソラフェニブと同じく一次治療薬としてレンバチニブが使用可能となりました。レンバチニブは生命予後の延長効果はソラフェニブとほぼ同等であるということが証明されていますが、一方で腫瘍に対する効果はソラフェニブより強力で、CTやMRIで腫瘍の縮小や壊死効果をはっきりと確認することができます。また、大変つらい副作用である手足症候群や下痢などの症状もソラフェニブと比べると軽いため、現在大いに期待されている分子標的薬です。副作用は手足症候群が少ない代わりに、高血圧や蛋白尿、甲状腺機能低下などがややソラフェニブより多い傾向にあります。いずれにしても、ソラフェニブに加えてレンバチニブ、レゴラフェニブといった新しい薬剤が加わり、肝がんの治療の選択肢が増えましたので、肝がん患者さんの予後がさらに延長されることが期待されています。

 
図 肝がんの新しい薬

近畿大学医学部消化器内科
主任教授

工藤 正俊

近畿大学医学部消化器内科 主任教授 工藤 正俊近影

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