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甲信越支部第42回教育講演会 演者略歴 高橋暁子 先生

甲信越支部第42回教育講演会 演者略歴 高橋暁子 先生

細胞老化が個体の機能低下に及ぼす影響の解析

公益財団法人がん研究会 がん研究所 細胞老化プロジェクト
国立研究開発法人 科学技術振興機構 さきがけ
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 PRIME

高橋 暁子

先進諸国の高齢化が進む中、我が国の平均寿命も年々延長し続けている。それに伴い、がん・動脈硬化・アルツハイマー・肺線維症・骨粗鬆症のように加齢と伴に罹患率が上昇する疾患(加齢性疾患)の増加が深刻な社会問題となっている。加齢性疾患の発症には様々な複合的な要因があげられるが、その一つとして加齢とともに体内に蓄積した老化細胞が関与している可能性が近年指摘されている。老化細胞は持続的なDNA損傷応答によってクロマチン構造が変化しており、炎症性サイトカイン・ケモカイン・マトリクス分解酵素や増殖因子のような様々な炎症性蛋白質の遺伝子発現が亢進し、細胞外へと分泌するSASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)をおこすことが知られている。そして、老化細胞から分泌されたSASP因子は周囲の組織に慢性的な炎症を引き起こし、加齢性疾患の発症や個体の機能低下の要因となっている可能性が示唆されている。我々はこれまで老化細胞でSASPがおこる分子機構の解析を行 い、SASP因子の遺伝子発現がエピジェネティックに制御されていることや、老化細胞ではゲノムDNA断片が細胞質に集積し細胞質核酸センサー(cGAS-STING経路)を活性化して自然免疫応答を引き起こすことでSASPを誘導していることなどを報告してきた。さらに我々は、老化した細胞においてはDNA損傷応答によって特異的なnon-coding RNAの発現が誘導され、このnon-coding RNAが染色 体不安定性を誘導することや細胞の腫瘍化に関わることを見出している。また、老化細胞では炎症性蛋白質だけではなく細胞外小胞(Small extracellular vesicle)の分泌も亢進しており、我々は細胞外小胞も加齢性疾患の発症に関 与するSASP因子の1つとしてはたらくことを見出している。このように我々は、老化細胞が分泌するさまざまなSASP因子の解析を通して、生体における細胞老化が個体の機能低下へ及ぼす影響を明らかにし将来的に制御法の開発へ繋げる ことを目指している。

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