一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.27-1

FOCUS 診療ガイドラインはどのようにして作られるのですか?

診療ガイドラインについて詳しく知ろう!

 皆さんは「(診療)ガイドライン」という言葉を聞いたことがあると思いますが、何のためにあるのか、またどのようにして作られるのかをご存知でしょうか?

 「診療ガイドライン」とは、医師などの医療者が科学的な根拠(エビデンス)に基づいて、患者さんにより適切で標準的な医療を提供できるように作成された文書です。一般的に次のような特徴や目的があります。

●診療ガイドラインの目的

  1. 診療の標準化:同じ疾患に対して全国的に一貫した治療方針を示す。
  2. エビデンスに基づく医療の推進:最新の研究や臨床試験の成果を反映。
  3. 医療の質の向上:不必要な検査や治療の回避、患者さんの安全確保。
  4. 医療者の意思決定支援:特に複雑なケースでの判断の参考になる。
  5. 患者さんへの説明支援:推奨される治療法や選択肢を患者さんと共有しやすくなる。

 ガイドラインは、Minds診療ガイドライン作成マニュアル(https://minds.jcqhc.or.jp/methods/cpg-development/minds-manual/)の作成方法に則って作成されます。簡単に述べますと、まずガイドライン作成委員長が対象領域の専門家を集めます。次に会議で診断や治療などで問題となるテーマ(クリニカルクエスチョン:CQ)を決定し、そのCQに対して推奨文(回答)の草案を作成します。CQは一般的に現在までに研究がされていくつかのエビデンスがあるテーマであり、すでに当たり前になっているテーマはバックグラウンドクエスチョン(BQ)、そして将来につながるようなテーマはフューチャーリサーチクエスチョン(FRQ)に細分化されます。このCQ、BQ、FRQの数には決まりはなく、ガイドラインによって様々です。その後、作成委員による会議で推奨文の調整とそのエビデンスの強さと推奨の強さを決めます。推奨の強さを決定する方法はいくつかありますが、“修正Delph(iデルファイ法)”などが用いられます。たとえば委員会メンバーの75%以上が投票し、その80%以上が賛成する場合を採用とします。また、同意が得られなかった場合は、作成委員会メンバーがフィードバックを行い、3回まで検討を繰り返します。

 こうして決められた、CQや推奨文は専門家により構成された評価委員会で最終評価されます。この評価委員は専門家だけではなく、ときにはその疾患に関係する患者さんなどが加わる場合もあります。こうした評価がされた後、最終的な修正が加えられた診療ガイドラインは、学会の公聴会やインターネットで公開されたのち、国民からの意見や情報(パブリック・コメント)が集められます。さらなる改訂の必要性のある問題が出てきたときは再検討され、最終の診療ガイドラインが完成します。なお、診療ガイドラインは、検査法や治療法のエビデンス、医療制度の変化をふまえた3~5年ごと継続的な改訂が求められています。したがって、診療ガイドラインも最新の医療を記載しているとは限らないことに注意が必要です。最新の情報は主治医に確認することが大切です。


東京医科大学 臨床医学系
消化器内科学分野 主任教授
糸井 隆夫

Share on  Facebook   Xエックス   LINE