一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.27-4

消化器病の薬

大腸内視鏡検査の前処置薬

大腸内視鏡検査を受ける際には、「腸の中をきれいにする薬」を飲む必要があります。これは、大腸に残った便を取り除き、内視鏡で腸の中をすみずみまで観察できるようにするためです。前処置が不十分だと、小さな病変を見逃してしまうリスクが高まるため、検査を正確に行うためには欠かせない重要な準備となります。

 

 大腸をきれいにするためには、「洗腸剤」と呼ばれる前処置薬を飲みます。この薬にはいくつか種類があり、それぞれ特徴や使用時の注意点が異なります。

 モビプレップ®配合内用剤は2リットルの水に溶かして飲む薬で、比較的飲みやすく工夫されていますが、成分が濃いので脱水症状を防ぐためのこまめな水分補給が必要です。ニフレック®配合内用剤も通常は2リットルを服用しますが、場合によっては追加の内服が求められることがあります。腎機能が低下している方にも比較的安全に使用でき、確実な洗浄効果が得られる薬剤です。マグコロール®内用液は味がよく飲みやすい洗腸剤ですが、腎臓に負担をかける可能性があり、腎機能障害のある方には適していません。サルプレップ®配合内用液やピコプレップ®配合内用剤は、少量で効果が得られるため高齢の方や水分摂取が苦手な方にも使いやすい一方で、腎機能に問題がある場合は使用できないため注意が必要です。

 これらの薬剤は、患者さんの体調や持病に応じて、医師が適切に選択します。いずれも医師の指示に従い、正しい方法で服用することが、安全かつ確実な前処置につながります。

 洗腸剤を飲んだ後は、腹部の膨満感や吐き気を感じることもあります。無理に飲み続けず、体調に異変を感じた場合には早めに医療機関に連絡しましょう。また、開腹手術歴のある方、腸閉塞の既往歴がある方、重度の心臓病や腎臓病を抱えている方は、薬の種類や飲み方に特別な配慮が必要です。自己判断で準備を進めるのは非常に危険なため、必ず医師と相談しながら進めることが大切です。

 大腸内視鏡検査を安全かつ正確に行うためには、前処置薬を正しく使用して腸を十分にきれいにしておくことが不可欠です。準備を怠ると、病変の見逃しや検査のやり直しにつながるリスクが高まります。安心して検査を受けるためにも、前処置薬の特徴や注意点をよく理解し、医師の指示を守りながら確実に準備を整えましょう。


 

東邦大学医学部内科学講座
消化器内科学分野 教授

松田 尚久

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