EMR(Endoscopic Mucosal Resection;内視鏡的粘膜切除術)

EMR(Endoscopic Mucosal Resection、内視鏡的粘膜切除術)は、内視鏡的に粘膜を毟りとる手技であり、消化管の腫瘍性病変の治療に主に用いられます。くびれたり茎を持ったものは、そのくびれや茎にワイヤを引っ掛けて高周波電流で焼き切ることができますが(ポリペクトミー)、平坦な(ひらべったい)ものや陥凹して(へこんで)いるものは、そのままではワイヤが引っ掛かりません。そこで生理食塩液などの液体を粘膜下層に注入しポリープ状に切除部位を持ち上げワイヤを引っ掛けて高周波電流で焼き切ります。液体の注入は固有筋層から粘膜を引き離す効果もありますので、消化管全層が切れて穿孔すること(消化管に穴が開くこと)を防ぐ効果もあります。この一連の手技をEMRといいます。様々なEMRの手技が開発されましたが、それらは大きく2通りがあり、ひとつは、ワイヤを引っ掛ける際に、内視鏡の穴を通した把持鉗子で切除部位を引っ張る方法、もうひとつは、内視鏡の先端で切除部位を吸引する方法です。いずれもたくさんの粘膜を剥ぎ取るための工夫です。ワイヤのサイズの物理的限界から一度に切除できる腫瘍の大きさは、2cmぐらいまでが限界であるといわれています。一度に切除できない場合は、2回、3回と同様の手技を繰り返すことで、腫瘍全体の摘除は可能ですが、腫瘍の病理学的評価が不十分となることと、高率に遺残再発が起こることが報告されており、いくつかに分けてとる方法はがんを治療対象にする際はあまり推奨できません。

一般的な治療対象病変は食道、胃、大腸で若干異なりますが、基本的には、リンパ節転移がないこと、と、技術的に無理なく一括切除ができるということ、を満たす腫瘍ということになります。具体的には、良性腫瘍と考えられる場合や、食道では、周在性が2/3周までの上皮内がんもしくは粘膜固有層までの浸潤にとどまるがん、胃では、2 cm以下のがんの組織が分化型で潰瘍所見がない粘膜がん、大腸では、2cm未満の粘膜がんもしくは粘膜下層軽度浸潤がんと診断される場合です。

切除に要する時間はおよそ15分〜30分で、大腸の場合は外来で行うことも多いですが、食道や胃の場合は、施設により3〜7日の入院が必要となります。術中・術後の主な偶発症は出血や穿孔です。出血は数%の方に、穿孔は1%以下の方に見られ、まれに輸血を要したり緊急手術で対応しないといけないほど、重篤な偶発症が起きることがあります。治療後も少なくとも1週間は食事や運動、仕事内容など、生活に制限が付きますので、担当の先生とよくご相談ください。

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