1.便潜血検査とは
消化管のどこかで管腔側(内側)から出血すると、便の中に血液が混入します(血便)。出血が多い場合には、出血の部位によりタール便から暗赤色、鮮紅色の顕血便すなわち肉眼的血便となりますが、出血が少量の場合には肉眼的な変化に乏しく(潜血便)、便の潜血反応を行うことで消化管出血の有無を診断します。
以前から行われてきた化学的便潜血検査(化学法)は、便中の血液成分による反応を利用した非特異的血液検出法です。この方法には食肉などの食事や鉄剤、ある種の薬剤と反応し偽陽性になりやすいという欠点がありました。
これらの問題を解消する目的で開発されたのが、食事制限の必要がなく、便中のヒト由来のヘモグロビンに特異的に反応を示す免疫学的便潜血検査(免疫法)です。化学法と免疫法でそれぞれ長所、短所がありますが、最近では免疫法が主流で、大腸がん検診の一次検査や下部消化管疾患のスクリーニング法として用いられています。
2.検査の方法
便の採取法は、便の表面をこすり取る方法やスティック状の採便棒を便に挿して取る方法があり、正確な結果を得るためにも容器に添付の説明書にしたがって採取してください。検診では1日1回ずつ2日間続けて採取する「2日法」が主流です。
3.検査が陽性の場合
大腸に何らかの病気がある可能性がありますので、すみやかに精密検査を受けてください。もう一度便潜血検査を行うのは意味がありません。もっとも正確な精密検査は大腸内視鏡検査ですが、何らかの理由により内視鏡検査が受けられない場合には注腸X線検査という方法もあります。
便潜血検査が陽性となるためには出血している病変が原因ですが、ポリープやがんの場合はある程度大きくないと陽性になりません。そのほか炎症性の腸疾患や痔核や裂肛などの肛門の病気でも陽性となります。陽性の場合でも、約半数の人には大腸に病気がありませんし、精密検査の結果、大腸がんと診断される人は0.1〜3%であり、そのうち約半数が早期がんです。自覚症状がなくて検診で発見された大腸がんは治る率が高いので、便潜血検査が陽性にでたからといって不安に思うことなく、精密検査をぜひ受けてください。
便潜血検査(化学法と免疫法)の利点と欠点
化学法 | 免疫法 | |
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利点 | 上部・下部消化管出血を検出可能。 簡便・迅速に検査可能。 採取後放置しても反応低下が少ない。 |
下部消化管出血を検出率が高い。 定性法では簡便・迅速。 食事制限が不要。 |
欠点 | 食事制限や薬剤内服の注意が必要。 | 採取後に室温放置すると反応が低下 採取法に工夫が必要。説明書にしたがう。 |
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がんやポリープがあると便が通過するときにこすれて血液が付着する。(病変がなくても血液が付着することがあります。) |
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血液は便中で均一に混ざっているわけではないので、いろいろの場所をこすります。 |
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スティックを保存容器に入れ、提出します。 |