便秘症

1.便秘症とは

健常成人は通常1日1回の排便があるが、便秘症では排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)を指しますが、明確な定義があるわけではありません。排便習慣は個人差が大きく、毎日排便があっても硬便や排便困難を感じる場合もあるし、排便が2〜3日に1回で、便が硬くても軟らかくても何の苦痛感を感じない場合もあります。問題となるのは排便困難や腹部膨満感など症状を伴う便通異常=「便秘症」です。

食物は胃で消化され、その栄養分は小腸で消化吸収されます。その残骸が大腸に送られますが、その時点では水分を多く含んだ泥状態です。これが大腸を移動する間、徐々に水分が吸収されて便塊となります。もし便塊が何日も大腸内にあると、水分吸収はさらにすすみ便塊は硬く小さくなります。(図1. 消化器NOW ’98,No.2より転用)

2.原因と症状

便秘症は、その原因により以下のように分けられます。

1)器質性便秘(通過障害)

消化管(小腸・大腸)の器質的障害が原因でおこる便秘です。

消化管内腫瘤、炎症性・瘢痕性狭窄、腸重積、癒着、消化管外腫瘤による圧排など。

2)機能性便秘

?症候性便秘

表のような全身性疾患や代謝性疾患などに伴って生じている便秘です。

?習慣性便秘

a) 弛緩性便秘

大腸の蠕動や緊張が低下することで糞便の通過時間が延長し、大腸で水分が高度に吸

収されて便が硬くなります。習慣性便秘で最も頻度が高く、日本人の便秘の中で最も

多くみられます。高齢者ややせ型の女性、長期臥床者(寝たきり)などに多く、食生

活・排便習慣・食物繊維の不足・腹筋力の低下が原因といわれています。

b) 痙攣性便秘

左側大腸の緊張が持続的に強いために大腸内容の推進がブロックされるために起こり

ます。排便に際し腹痛を伴い、最初に硬い便(兎糞状)が出て、後半は軟便ないし泥

状のことが多いです。また排便後もすっきりせず、残便感や少量の軟便ないし泥状便

が続くことも少なくありません。過敏性腸症候群の症状としてみられることが多いよ

うです。

c) 直腸型便秘

直腸内に入ってきた便をうまく排出できない状態。正常では便が直腸に下りてくると

直腸壁の伸展刺激により排便反射が起こりますが、この反射が起こらなくなった状態であり、便意を我慢する習慣を続けた結果なることが多いといわれています。

3.診断

器質的疾患の鑑別と症候性便秘の鑑別が重要です。器質的疾患の検索には一般的スクリーニング検査(便潜血検査も含め)と下部消化管造影検査(注腸造影)あるいは下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡検査)は必要となります。比較的急に便秘傾向となった場合は特に重要となります。また慢性便秘症では症候性便秘の原因となる疾患の検察も必要となります。

4.治療

器質性便秘や症候性便秘では、便秘の原因である基礎疾患の治療が中心となります。

習慣性便秘では、規則正しい排便習慣の確立、食物繊維を十分に含んだ食事など日常生活改善に加え、必要に応じて塩類下剤、膨張性下剤、浸潤性下剤、腸刺激性下剤などを適宜使用します。

図1.


表1.  症候性便秘の代表的な原因疾患

内分泌疾患 甲状腺機能低下症、褐色細胞腫、下垂体機能低下症、副甲状腺機能亢進症
代謝性疾患 糖尿病、アミロイドーシス、尿毒症
中毒性疾患 鉛中毒、ヒ素中毒
神経疾患 パーキンソン病、脳血管障害、脳腫瘍、多発性硬化症
膠原病 強皮症
薬剤 抗コリン薬、三環系抗うつ薬、Ca拮抗薬
肛門疾患 痔疾患、肛門周囲膿瘍

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