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健康情報誌「消化器のひろば」No.10

健康情報誌「消化器のひろば」No.10

消化器の検査 便潜血

 近年、大腸がんの罹患者数と死亡者数が急増しています。日本では、年間5万人以上の方が大腸がんで命を落としている現状です(図1)。その一方で、早期がんの段階で発見されればほぼすべての方の命を救うことができる、つまり「検診による早期発見」が非常に効果的ながんの一つです。実際に検診で発見される大腸がんの約60%が早期がんであるのに対して、何らかの腹部症状があって病院を受診し発見される大腸がんの約80%が進行がんです(図2)。早期の大腸がんはほとんど自覚症状がありません。今回、大腸がん検診の検査法として広く推奨されている「便潜血検査(免疫法)」について解説します。

便潜血検査(免疫法)とは?

 侵襲性(身体に負担)のない大腸がん検査法の一つです。大腸がんの多くは大腸(下部消化管)からの出血を伴うため、便に血液が混入します。この検査では、便中に混入した血液(ヒトヘモグロビン)を検出し、大腸での出血の有無を確認します。

《1. 特徴》

  • 上部消化管(食道・胃・十二指腸など)からの出血や食事の影響を受けず、大腸から出血の有無を確認できます。
  • 痔核などの肛門出血や大腸がん以外の疾患(ポリープや大腸炎など)でも陽性となる場合があります。
  • 進行がんの約10%、早期がんの約30~50%が陰性となります。ただし、年1回の便潜血検査を継続して受けることで、陽性となる確率は向上します。

 

《2. 採便の方法》

  • 採便容器の説明書に従って採便を行います。トイレの洗浄水に添加されている消臭・消毒液が便に付着すると、正確な検査が行えませんので、洗浄水が便に付着しないよう気を付けましょう。
  • 血液が付着しているのは便表面の一部だけのことが多いため、スティック状の採便器で、便の表面を広くまんべんなくこすります。先端の溝が埋まるくらいの便を取りましょう(図3)。少なすぎても多すぎても、正確な検査になりません。
  • 室温が高いとヘモグロビンが変性していくので、冷暗所での保存が望まれます。採便後は速やかに提出しましょう。

 

《3. 便潜血「陽性」と言われたら?》
 便潜血検査の結果が陽性となった場合(2日のうち1日でも陽性となった場合)には、精密検査である大腸内視鏡検査を必ず受けましょう。陽性者の中で大腸がんが発見される割合は5%前後と言われています。大腸がん以外にも、前がん病変と考えられる大腸ポリープ(腺腫性ポリープ)が発見されることもあります。内視鏡的にそのようなポリープを摘除することで、その後の大腸がん罹患リスクが減少します。2日とも陰性の場合は、翌年の検診(便潜血検査)を受けましょう。

図1 2015年の「がん死亡者数」予測 図2 「検診発見がん」の60%が早期がん 図3 「検診発見がん」の60%が早期がん

国立がん研究センター中央病院
検診センター/内視鏡科
検診センター長

松田 尚久

国立がん研究センター中央病院検診センター/内視鏡科 検診センター長 松田 尚久近影

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