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健康情報誌「消化器のひろば」No.15

健康情報誌「消化器のひろば」No.15

気になる消化器病 逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃液が食道に逆流し、主に胸やけ・げっぷ症状を呈する病気です。肥満や就寝前の食事摂取等により増悪します。重症例では、貧血や食道狭窄の合併症を来し、特に高齢者では、注意が必要です。適切な診断および治療のため医療機関の受診をおすすめします。

逆流性食道炎

 逆流性食道炎は、胃液や胃内容物が食道に逆流することにより、食道に炎症を来し食道粘膜に傷(びらんや潰瘍)を認める病気です。高齢者人口の増加、生活習慣の欧米化やヘリコバクター・ピロリ感染率の低下に伴い増加し、有病率は10%前後と報告されています。症状は、胸やけ(胸がやけるような感じや痛み、違和感)やげっぷが一般的で、胸痛、慢性の咳、喉の不快感、睡眠障害などの非定型症状を呈する場合もあります。診断には内視鏡検査が必要で、重症になると、無症状であっても食道出血による貧血や、さらに食道狭窄を合併することもあります。

 肥満や食事摂取後の臥床は、逆流の原因となります。食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)の逆流防止機能の低下として、腹腔内にある胃の入口の一部が胸腔内に滑り出した状態(食道裂孔ヘルニア)や食道の運動障害は、重症および難治性の因子と考えられています。解熱鎮痛剤や呼吸器疾患や循環器疾患に対する薬剤でも増悪することがあります。特に高齢者は症状が軽微でも、重症化しやすいため注意が必要です。

 治療としては、肥満に対する食事・運動療法が基本となります。また食事摂取直後の臥床を避け、早めの夕食の摂取あるいは摂取量の制限を心がけることも重要です。胃酸の分泌を抑制する薬剤が治療の中心になりますが、中でも、プロトンポンプ阻害薬が第一選択薬となっています。症状が改善しても、食道裂孔ヘルニアを伴う場合や肥満の場合は、薬剤の中止により再発を来しやすく、継続的な治療(維持療法)が必要なことが多いです。重症例では、さらに強力な治療や長期の維持療法が必要です。

一方で、治療薬を用いる場合には、他の薬剤の併用による相互作用について注意が必要な場合があります。またプロトンポンプ阻害薬内服と骨折、誤嚥性肺炎、腎障害、胃ポリープの増大などの関連性が報告されています。しかし有意な因果関係が直接証明され確立されている有害事象はなく、過度に心配する必要はありません。正しい適用に基づいて適切な期間の内服が大切です。内視鏡検査による診断のもと適切な治療を受けられることをおすすめします。

図 逆流性食道炎の病態

川崎医科大学
消化管内科学教室
教授

塩谷 昭子

川崎医科大学 消化管内科学教室 教授 塩谷 昭子

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