一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.16-8

消化器どうしました?Q&Aこのコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。

Q. 術前・術後の補助化学療法について教えてください。

図 

 多くの消化器がんは、“がん”を手術で切除することにより、完全に治す(完治させる)ことが可能です。しかしながら、ある程度進行している場合には、肉眼的に観察できる“がん”をすべて切除しても再発することがあります。これは数mm以下の小さな“がん”が、肝臓やリンパ節、腹膜に残っていることが原因と考えられています。そのため、手術後に抗がん剤を投与し、残った微小ながんに対して治療を行うことを、手術を補助する治療という意味から、「術後補助化学療法」と呼びます。

 進行した胃がん、大腸がん、膵がんなどでは、術後6ヵ月から12ヵ月の期間、経口薬あるいは注射薬による術後補助化学療法を行うと平均生存期間が延長することがわかっており、一般に行われています。

 一方で手術後には、手術による合併症や体力低下により抗がん剤が投与できない患者さんがある一定の割合で存在します。また手術前に抗がん剤治療を行うことにより腫瘍が小さくなり、その結果簡単に切除することができる患者さんもいます。

 そのため、最初にまず抗がん剤治療を行い、その後に手術を行うという治療法を「術前補助化学療法」と言います。食道がん、膵がんなどでこの有用性が明らかになってきています。

 消化器がんの治療にあたる専門的な病院では、この術後補助化学療法、術前補助化学療法は、基本的に最新の診療ガイドラインに沿って行われています。


<回答者>

東北大学大学院医学系研究科
外科病態学消化器外科学分野
教授

海野 倫明

東北大学大学院医学系研究科 外科病態学消化器外科学分野 教授 海野 倫明近影
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