一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.16-3

気になる消化器病 ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎とはウイルスが肝臓に感染し炎症を起こした状態で、原因ウイルスにより病状の経過が異なります。一過性に治癒する場合、急激に悪化する場合や慢性化し肝硬変、肝がんへ進行する場合があります。慢性期には無症状のことが多いので、一度は血液検査を受けてください。

ウイルス性肝炎

 本邦でのB型およびC型肝炎ウイルス感染者は200万人を超えると推定されています。肝炎ウイルス感染は肝硬変や肝がんの原因になります。感染の早期発見のために、健康診断などの機会に1回は肝炎ウイルス検査を受けましょう。

 C型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染します。急性肝炎で発症する場合もありますが、多くの場合慢性に経過し、数十年かけて肝硬変へと進行します。病気の進行と並行して肝臓がん発症の危険が段階的に高まります。C型肝炎は本邦における肝臓がんの最大の原因です。血液検査でHCV抗体などを確認し診断します。感染が確認された場合は、肝硬変へ進行していないか肝生検などで評価することが重要です。また肝臓がんの早期発見のために超音波検査などの画像検査を定期的に受けることが大切です。治療として最近では数カ月間の直接作用型抗ウイルス薬の内服でウイルスを駆除できます。一方、B型肝炎ウイルスは血液・体液を介して感染します。成人期に感染した場合、急性肝炎となり全身倦怠感、食欲不振などの症状が出現します。一過性に経過することが多いのですが、中には劇症化し肝不全で死亡することがあります。出産時や乳幼児期に感染した場合、無症状かつ肝機能検査に異常値を示さず経過しますが、20〜40歳代で反復して肝炎が起こり、一部の方は慢性に経過して肝硬変、肝がんになります。血液検査でB型肝炎ウイルスの抗原や抗体、HBV-DNAなどを確認します。治療は内服薬の核酸アナログ製剤と注射薬のインターフェロンがあります。出産時の母子感染に対する対策、B型肝炎ワクチンの定期接種による感染予防が講じられています。

 A型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスは、食物を介して感染すると考えられています。感染経路は、A型肝炎ウイルスが感染した牡蠣など海産物の生食、E型肝炎ウイルスはイノシシ、野生のシカ肉などの摂食が関連します。発熱、頭痛、倦怠感、食欲不振などの症状が強いです。一過性に経過し治癒することがほとんどですが、特に高齢者では劇症化し致死的なこともあり、注意が必要です。E型肝炎は致死率が高いのでジビエなどの生食を避けて予防することが大切です。

図 ウイルス性肝炎


 

大阪市立大学大学院
医学研究科
肝胆膵病態内科学
教授

河田 則文

大阪市立大学大学院 医学研究科 肝胆膵病態内科学 教授 河田 則文
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