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健康情報誌「消化器のひろば」No.18

健康情報誌「消化器のひろば」No.18

気になる消化器病 新型コロナウイルスと消化器症状

世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症は、味覚・嗅覚障害や発熱・咳・咽頭痛といった感冒症状、そして重症化すると肺炎と呼吸器系の不調が症状の中心です。しかし、これら以外にも、心臓や神経、そして消化器系と全身に影響を及ぼすことがわかってきています。特に消化器症状は比較的高い頻度で認められるため注意が必要です。

新型コロナウイルスと消化器症状

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2020年3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言し、世界各国が都市封鎖などの強力な対策を講じた後も第2波、第3波が到来し世界中で猛威をふるっています。

COVID-19は、軽症時には味覚・嗅覚障害や発熱・咳・鼻汁・咽頭痛などのいわゆる感冒症状を呈しますが、重症化すると肺炎を発症し呼吸不全から死に至ることもあります。呼吸器系以外にも様々な症状を引き起こすことが知られていますが、その中でも消化器症状は15~50%と高い頻度で認められます。主な症状は、下痢、腹痛、嘔気・嘔吐、食思不振などであり、特に下痢はCOVID-19患者の40%に認められた、という報告もあります。また、肝臓や膵臓に障害を引き起こすことも知られています。

発熱や咳・痰といった呼吸器系の不調が症状の中心にあり、そこに下痢などの消化器症状も同時に起こっていた、というケースが多くなりますが、消化器症状を主訴に来院しCOVID-19と診断された例も約3%認められた、という報告もあります。

COVID-19による消化器症状と、他のウイルスや細菌などによって引き起こされる同様の症状は新型コロナウイルスの検査以外で見分けることができません。では、下痢などの症状が出現したときにはどのように考えると良いでしょうか?大切なことは2つあります。1つ目は、COVID-19であるかにかかわらず排泄物や吐物の中には病原体が多く含まれており、周囲の人へ感染を拡げる原因となってしまうことです。家庭内でも排泄物や吐物を処理する際には、手袋・マスクを着用し、手袋を外した後には石鹸での手洗いを徹底することが大切です。特にCOVID-19では呼吸器症状が治まった後も便からのウイルス検出が持続することが報告されており、注意が必要です。2つ目は、COVID-19の流行状況、周囲での感染者の有無、そして自身に消化器系以外の症状があるかを総合的に考えて、医療機関への相談や受診を検討することです。たとえば、頻度が高い下痢症状で考えてみましょう。COVID-19が特に流行している時期に、周囲に感染者がいて、下痢の症状が出現し、咳などの感冒症状もあるとなればCOVID-19の可能性は高くなります。一方で、感染者の流行が落ち着いている時期に、周囲に感染者がいない中で出現した下痢単独の症状については、COVID-19の可能性は低いと考えられます。

COVID-19で消化器症状を生じることが決して稀ではないことを知っていただき、そのうえで住んでいる地域での流行状況や周囲の感染者の有無、呼吸器症状の合併などから総合的に判断していくことが大切です。そして何よりも手洗い・手指衛生を徹底することが、感染しない・させない一番の方法です。

東京大学医学部附属病院
感染制御部・消化器内科
助教

奥新 和也

>東京大学医学部附属病院 感染制御部・消化器内科 助教 奥新 和也

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