一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.19-1

FOCUS コロナ時代のがん検診

適切な感染対策を講じた検診を受け がんを早期発見・治療しましょう

 2019年12月、中国・武漢に始まった新型コロナウイルス感染症は世界的なパンデミックへと拡大し、未だその勢いは止まりません。我が国でも2020年4月以来、数度にわたり緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出され、未だに不要不急の外出自粛や社会経済活動の制限が求められています。

 こうした中、全国で各種がん検診の実施が延期または中止されたり、また、自己判断で受診を見合わせてしまったりした方も数多く出てしまいました。日本対がん協会の調べでは、2020年(1月~ 12月)に全国32支部で実施されたがん検診(胃、肺、大腸、乳、子宮頸)の受診者は2019年と比較して約172万人減少し、対前年比30.5%の大幅減となりました。減少した受診者数から推計すると、合わせて約2,100例のがんが未発見となっている可能性があると見積もられています。

 日本人の2人に1人は一生のうちに何らかのがんにかかり、3人に1人ががんで死亡しています。がんは一度発生すると時間とともに進行し、何もしないで放っておくと、やがては重症化して死に至ることもある病気です。しかも、がんの多くは無症状のまま進行するため、症状が出て気がついたときには治療ができないほど悪化している場合もあります。

 現在、国は胃・肺・大腸・乳・子宮頸がんの5つのがん検診を推奨していますが、これらは検診の受診によって死亡率が減少することが科学的に証明された方法で実施されています。がん検診で発見されるがんの多くは早期がんであり、症状が出て病院を受診して初めて発見されるがんに比べて予後が良く、内視鏡治療など体の負担が少ない治療で済む可能性が高いとされています。がんで亡くならないようにするには、無症状のうちにがんを早期発見し、早期治療すること、すなわち、がん検診を受診することが最も有効な手立てです。

 新型コロナウイルス感染症は重症化すると死に至ることもある大変怖い病気ですが、ソーシャルディスタンシングの確保、マスク着用や咳エチケット、手洗いなどの手指衛生、そして、換気の悪い密閉空間・多数の人が集まる密集場所・間近で会話や発声をする密接場面といったいわゆる「三つの密」の回避を徹底することで予防することが可能です。ワクチン接種も強力な予防策です。がん検診は「不要不急の外出」にはあたらないというのが国の見解です。緊急事態宣言解除後の各種がん検診は、国の感染対策ガイドラインや関係学会が策定した提言に基づいて、適切な感染対策を講じたうえで実施されています。

 「がん検診を受診して新型コロナに感染するのが怖い」といった過剰な不安感からがん検診の受診を控えてしまい、せっかくのがんの早期発見の機会を逃してしまうのはもったいない話です。がんの診断や治療が遅れてしまわないように、しっかりと感染対策をとってがん検診を受診するようお願いします。


 

宮城県対がん協会
がん検診センター 所長

加藤 勝章

加藤 勝章 近影
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