一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.19-7

消化器どうしました?Q&Aこのコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。

Q. ストレスで起こる消化器の病気は何ですか?

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 ストレスは万病のもとです。ストレスが関係する消化器の病気の代表が過敏性腸症候群です。

 これは、腹痛と下痢・便秘が続く状態です。大腸内視鏡検査を含む検査では異常がないため、たいした病気じゃないと誤解されがちです。しかし、アメリカやイギリスなどストレスが多い先進諸国では重視されている病気です。世界人口の約4.1%を占めています。

 過敏性腸症候群の発症と悪化の両方にストレスが関係します。ストレスを感じると、脳内でCRHというホルモンが分泌されます。CRHが適量だと健康的な生体反応で終わります。しかし、分泌量が多すぎる、反応性が強すぎるなどにより、うつ・不安になり、粘膜のバリア機能が弱体化し、弱い炎症が生じます。さらに内臓が感じやすくなり、大腸の収縮が強く生じます。その結果、腸の痛みを強く感じるだけでなく、下痢や便秘も起こるのです。ストレスは腸内細菌の種類を変えてしまい、有害な菌から体を守る免疫力も悪くします(図)。

 日本消化器病学会がその診療ガイドラインを出しています。生活様式の調整、食事療法、薬物療法が主になります。第一段階で腸内環境と腸機能を整え、第二段階でストレス反応を緩和する抗うつ薬などを加えます。改善がないとき、第三段階としてストレスを無害化する心理療法を推奨します。脳と腸の両方が関係するため、最初の腸の調整を消化器内科で行い、脳の調整が大幅に必要ならば心療内科を紹介してもらってください。

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<回答者>

東北大学大学院医学系研究科
心療内科学 教授

福土 審

東北大学大学院医学系研究科 福土 審
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