一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.22-8

消化器どうしました?Q&Aこのコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。

Q. 機能性胃腸症や過敏性腸症候群の方から慢性膵炎がみつかることがあると聞きました。

図 膵臓は胃の背中側に位置しており、横行結腸も近くにあります。膵臓には2つの働きがあり、一つはインスリン分泌などにより血糖を調節する内分泌機能、もう一つは消化酵素(膵液)を分泌する外分泌機能です。

 慢性膵炎は、飲酒や喫煙などにより膵臓の炎症や線維化(硬化)を引き起こして発症します。慢性膵炎では膵臓の2つの働きが失われ、上腹部痛・背部痛、軟便・下痢といった機能性胃腸症や過敏性腸症候群と同じ症状も見られます。膵がんでも同様の症状を認めることがあります。胃や大腸の内視鏡検査で上記症状の原因となる病変を認めず、機能性胃腸症や過敏性腸症候群と診断されている患者さんの中には慢性膵炎や膵がんが潜んでいることがあります。糖尿病を患っていたり血縁者に膵がんや膵炎の方がいる場合は、特に注意が必要です。膵臓の検査はまず血液検査と超音波・CTといった画像検査を行います。血液検査でアミラーゼ・リパーゼなどの膵酵素やCA19−9という腫瘍マーカーが異常値となったり、画像検査で膵管(膵液の通り道)の太まり・膵嚢胞(膵液の溜まり)・膵萎縮(膵臓のやせ細り)・膵臓の凹みなどを認めた場合、核磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)や超音波内視鏡(EUS)といった膵臓の精密検査が必要となります。MRCPでは膵嚢胞・膵管拡張・膵管狭窄など、膵管の異常を検出します。EUSは胃や十二指腸の中から膵臓に近接して検査するため、超音波やCTで捉えられない膵臓の微小な線維化やミリ単位の腫瘍を検出することができます。

 内服薬服用後も心窩部痛・下痢などの機能性胃腸症や過敏性腸症候群の症状が改善しない場合や、膵がん危険因子を有する場合、血液検査や画像検査を受けて慢性膵炎や膵がんを疑う所見がないかを確認してください。


<回答者>

川崎医科大学
消化器内科学教室 教授

吉田 浩司

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