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健康情報誌「消化器のひろば」No.23-4

JAK阻害薬

胆道がんの化学療法

ゲムシタビンとシスプラチンの2つの抗がん薬とデュルバルマブという新薬(免疫チェックポイント阻害薬)との併用療法が胆道がんに対して高い有効性を示した国際共同試験(TOPAZ-1)の結果が、2023年1月に発表されました。13年ぶりの新治療確立となる画期的な報告であり、胆道がん治療の新しい時代の幕開けといえます。

図

 胆道がんは世界的には患者さんが少なく、希少がんと呼ばれている疾患です。そのため、研究者や製薬会社の関心が低く、これまでは良い薬がなかなか開発されてきませんでした。しかし日本をはじめとするアジアの国々では患者さんが多く、しかも予後が不良な疾患であるため、私たちにとっては胆道がんに対するより良い治療法の確立は非常に重要です。

 切除不能な胆道がんに対する国際的な標準治療はゲムシタビンとシスプラチンという2つの抗がん薬を併用する治療法(GC療法)です。GC療法は2010年にその有効性が報告されましたが、その後10年以上GC療法を凌駕する国際的にも認められた新治療法は出てきませんでした。ところが2023年1月にTOPAZ-1という国際共同試験の結果が発表され、GC療法にデュルバルマブという薬剤を併用すると患者さんの予後が改善することが報告されました(図)

図 ゲムシタビン・シスプラチン・デュルバルマブの併用療法

 がん細胞は細胞表面にPD-L1という物質を作り、免疫細胞表面にあるPD-1と結合して、免疫細胞ががん細胞を攻撃する働きを弱めてしまいます。デュルバルマブは免疫チェックポイント阻害薬といわれる新しいタイプの薬剤で、がん細胞表面のPD-L1に結合することによってPD-L1がPD-1に結合できないようにして、免疫細胞ががん細胞を攻撃する働きを回復する作用を有しています。デュルバルマブの副作用は、免疫機能の過剰な働きによって現れる可能性があり、注意すべき副作用としては肺や肝臓、腎臓、胃腸、内分泌をつかさどる臓器などの障害があります。これらの副作用に対しては早期に気づいて適切な治療を受けることによって重症化を防ぐことが大切です。

 胆道がんにはがん細胞に増殖を命令する遺伝子異常が複数発見されており、これらを狙い撃ちする新しい薬剤(分子標的薬)の開発も進んでいます。免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの新しい薬剤の導入によって、胆道がん患者さんの予後が今後ますます向上すると期待されています。


 

国立がん研究センター中央病院
肝胆膵内科 肝胆膵内科長

奥坂 拓志

国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科 肝胆膵内科長 奥坂 拓志 近影
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