一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.23-5

image-enhanced endoscopy(画像強調内視鏡)

 内視鏡検査は、口からあるいはお尻から内視鏡を入れて消化管の中を調べる検査です。消化管の中は暗いので通常は白い光を照射して観察しますが、より詳細な情報を得たい、微細な変化を捉えてより早期に発見したい、という医師らの渇望があり、様々な工夫がされてきました。

 青色の色素(インジゴカルミン)を散布することで粘膜の凹凸が強調され、通常では見つけにくい胃や大腸の病変を発見できます(図1ab)。また、食道ではルゴール液(ヨウ素溶液)を散布し、見つけにくいがんを発見し、がんの範囲を決定するのに利用してきました(図2ab)。これらは色素内視鏡と名付けられて今でも活用されていますが、やや手間がかかり、液体に臭いや刺激があるので、患者さんにとってもわずらわしさや抵抗感がありました。

 近年、ボタンを押すことで照射する光の波長を変え、病変の特徴を強調する技術が開発されました。先ほどの色素内視鏡も含めて画像強調内視鏡(image-enhanced endoscopy:IEE)と総称します。 IEEの一つであるNBIやBLIという観察モードは青色と緑色の短い波長の光だけを照射し、粘膜表面の血管や凹凸を強調します。食道ではルゴール液の散布と遜色ない精度で食道がんを発見できます(図2c)。また、胃ではズーム機能のついた内視鏡を併用してがんに特徴的な血管や粘膜の変化を捉え、検査中にリアルタイムでがんの診断ができます。大腸でもポリープの見つけやすさを向上させます(図1c)。近年はさらに従来の画像に似せつつ構造と色調を強調するようなLCIやTXI、狭帯域光とは逆に長い波長の光を用いて深部の血管を強調したり内視鏡処置中の出血点をわかりやすくしたりする RDIなど新規の IEEが日常診療で使用されています。

 日本の内視鏡医は技術に優れ、診断の精度が高いと言われてきました。さらに、より正確な診断を提供するため IEEを駆使しています。内視鏡検査には若干の苦痛や手間が伴いますが、安心して質の高い検査を受けていただけます。

図1 大腸(上行結腸)ポリープの内視鏡像

図2 食道がんの内視鏡像


 

群馬大学医学部附属病院
光学医療診療部 診療教授

竹内 洋司

群馬大学医学部附属病院 光学医療診療部 診療教授 竹内 洋司 近影
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