このコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。
Q. 肝血管腫は治療する必要がありますか?
肝血管腫は、良性の肝腫瘍の中で最も頻度が高い疾患ですが、採血検査の所見での異常や、身体的症状があることはほとんどありません。そのため、多くの患者さんは自覚症状を伴わないまま、血管腫を有しています。一部、巨大血管腫の場合は上腹部不快感、右上腹部痛、圧排による肝機能障害などが起きることもありますが、極めてまれになります。
肝血管腫は一般的に、健康診断や人間ドックのときに腹部画像検査、特に腹部超音波検査で発見されることが多くなります。確定診断には造影剤を使用したCT検査、MRI検査などの画像検査を行いますが、極めて特徴的な造影パターンが見られるため、診断は比較的容易になります。多くの場合は自他覚症状なく予後にも影響はないため、治療の必要性はありませんので、健康診断や人間ドックなどで定期的に画像フォローを受けていただくのみとなります。
良性の肝腫瘍ですが、年に数ミリ単位で大きくなることもよくあります。一方で短期間に急速に増大する、数が増えるような場合は、画像検査で同じような造影パターンを示す肝血管肉腫との鑑別を要することもあります。その場合は、PET検査などを追加して、さらに調べていくことになります。
良性の経過でも、ごくまれに増大傾向による周辺臓器の圧排、腫瘍内の出血・血栓などによって自覚症状を伴う場合は治療対象となることありますが、基本的には“治療を行わず、経過観察”と考えていただいて問題ありません。