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健康情報誌「消化器のひろば」No.28-4

消化器病の薬

ゾルベツキシマブ

ゾルベツキシマブは、胃がん細胞の“目印”である「クローディン18.2」に結合し、免疫ががんを攻撃しやすくなるよう助ける新しいタイプの分子標的薬であり、従来とは異なる抗がん剤になります。

 

 ゾルベツキシマブは、進行した胃がんに対して新しく使われるようになった、これまでとは少し考え方の違う薬です。今までの多くの薬は、がん細胞が増えるために必要な「合図」や「スイッチ」を止めることで効果を出してきました。しかし胃がんでは、このようなわかりやすい弱点が見つかりにくく、患者さんごとにも違いがあるため、治療が難しいと言われてきました。

 そこで注目されたのが、胃の細胞同士をくっつけるクローディン18.2というタンパク質です。これは細胞と細胞がすき間なく並ぶための「のり」のような役目をしていて、細胞のバリアを守る大切な部分です。通常の胃の細胞では、このクローディン18.2は細胞のすき間に深く入りこんでいて、外からの影響をほとんど受けません。ところが、がんになると細胞の並びが崩れて、このクローディン18.2が細胞の表面に見えるようになることがあります。これが“目印”として使えるポイントです。

 ゾルベツキシマブは、この目印にぴったりくっつく抗体(タンパク質)です。薬がクローディン18.2に結合すると、体にもともと備わっている免疫の力(ナチュラルキラー細胞や補体など)に「ここにがん細胞があるよ」と知らせ、がん細胞を攻撃しやすくします。実際の治療の研究では、この薬を従来の化学療法と一緒に使うことで、病気の進行を抑える期間や生存期間が延びることがわかり、日本でも特定の胃がんに対して承認されました。ただし、吐き気や嘔吐が出ることがあり、薬とうまくつきあうためのサポートが必要になります。

 ゾルベツキシマブは、がん治療の考え方を「がん増殖のスイッチを止める」から「がん細胞を目印で見つけて免疫に攻撃してもらう」へと大きく変えた薬です。今後、同じ仕組みを使った新しい治療が広がることが期待されています。


 

埼玉県立がんセンター
消化器内科 科長兼診療部長
原 浩樹

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