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旅行中の飲食に注意すべきこと

旅行中の飲食に注意すべきこと

旅行中の飲食時に気をつけたい10箇条

旅行者がかかる病気の最も多い原因は、食べ物と水です。
安全に食事を楽しむために、次の点に気をつけましょう。

  1. 石鹸と水でよく手を洗うようにし、特に食事の前には丁寧に洗いましょう。石鹸と水がない時には、アルコールベースのハンドジェル(少なくとも60%がアルコール成分のもの)を使ってください。
  2. 水が汚染されている地域では、水道水で歯を磨かないようにしましょう。
  3. 水を飲む場合には、ボトル入りのミネラルウォーターか沸騰させた水、もしくは缶やボトル入りの発泡水を飲みましょう。
  4. 水道水、井戸水、氷は避けましょう。もし避けられない場合には、できるだけ安全に飲める方法をよく調べましょう。
  5. 清涼飲料水の缶やボトルの表面についている水滴は汚染されている可能性があります。缶やボトルの飲み口の部分はよく拭いて清潔にしておきましょう。
  6. 屋台で売られている食べ物は食べないようにしましょう。
  7. よく火が通ったものを食べましょう。
  8. 殺菌済みかどうか分からない乳製品は食べないようにしましょう。
  9. 魚の中には、その身に毒を持つものがあるので、よく調理されたものであっても安全とは限りません。
  10. 生後6ヶ月以内の乳児には母乳か、粉ミルクを沸騰させたお湯で作って与えましょう。

オリジナル文献
WGO (World Gastroenterology Organization)
“10 Eating & Drinking Tips While Traveling”
http://www.wgofoundation.org/assets/export/userfiles/pdfs/10%20Tips.pdf


旅行者下痢についてよくある質問

どんな人が旅行者下痢にかかりますか?

旅行者下痢は、旅行者が最もかかりやすい病気です。毎年、海外旅行者の20~50%、おおよそ1,000万人が下痢にかかっています。旅行者下痢の発症は通常、旅行の第1週目に見られますが、旅行中のいつでも起こる可能性があり、旅行から帰った後に発症する可能性もあります。感染するリスクを左右する最も重要な要因は、旅行する地域です。最もリスクの高い地域は、ラテンアメリカ、アフリカ、中東、そしてアジアの発展途上国です。また、一般的に感染するリスクが高いのは、10代後半の若者、免疫抑制者、炎症性腸疾患や糖尿病患者、H-2ブロッカーや制酸薬服用者などであり、感染の男女比率はほぼ同じです。また、感染の主な原因は、糞便に汚染された食べ物や水です。

旅行者下痢の一般的な症状は何ですか?

ほとんどの場合、旅行者下痢は突然発症します。そして排便の頻度と量が増えるのが一般的です。便の硬さに異常が出るのもよくあることです。典型的な例としては、毎日4~5回の軟便もしくは水様便の排泄があります。その他の一般的な症状は、吐き気、嘔吐、下痢、腹部痙攣、腹部膨満、発熱、繰り返す急な便意、倦怠感などがあります。ほとんどのケースでは症状はそれほど重くなることはなく、治療をしなくても1-2日で治まります。しかし、まれに命に危険があるような旅行者下痢もあります。旅行者下痢患者の自然経過として、過去の統計では1週間以内に90%が、1ヶ月以内に98%が治癒します。

旅行者下痢の原因は何ですか?

旅行者下痢の主な原因は感染性病原菌です。細菌性の腸管病原体が旅行者下痢のおおよそ80%の原因となっています。調査によって明らかになっている、最もよくある病因病原体は、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)です。ETECは微熱または発熱のない激しい腹痛を伴う水様下痢を引き起こします。ETECやその他の細菌性病原体の他には、様々なウイルスまたは寄生虫も病因になる可能性があります。

旅行者下痢を予防するのに効果的な方法は何ですか?

旅行者下痢は、以下の予防策を取ることで、感染リスクを最小限にすることができます。

  • 屋台や非衛生的な環境の場所で売られている食べ物を食べたり、飲み物を飲んだりすることを避けましょう。
  • 生もしくは十分に火が通っていない肉や魚介類を食べることを避けましょう。
  • 皮をむかずに、生のフルーツ(オレンジ、バナナ、アボカドなど)や野菜を食べることを避けましょう。

十分に加熱調理された、パッケージ入りの食べ物は通常は安全でしょう。水道水、氷、低温殺菌されていない牛乳や乳製品は、旅行者下痢にかかるリスクを高める一因となります。ボトル入りの炭酸飲料、温かいお茶やコーヒー、ビール、ワイン、沸騰させるかヨウ素または塩素で適切に処理された水などは安全な飲み物と言えるでしょう。

旅行者下痢の予防のために薬を服用するのはどうでしょうか?

アメリカ疾病予防管理センターは旅行者下痢を予防するために抗菌薬を使うことは勧めていません。研究では次サリチル酸ビスマスまたは抗菌薬を使用することで旅行者下痢の発症率が下がることが明らかになっており、またいくつかの研究では、次サリチル酸ビスマスを2錠ずつ1日4回、もしくは2オンスずつ1日4回服薬することで、発症率が下がるという結果が出ています。これらの服用によって、抗菌と分泌抑制の両方の作用が見られます。次サリチル酸ビスマスの服用は、アスピリンアレルギーのある方、妊娠中の方、その他特定の薬を服用中の方(抗凝固薬、プロベネシド、メトトレキサートなど)は避けてください。また、舌や便が一時的に黒くなったり、時々耳鳴りが起こるなどの副作用の可能性があることを充分理解して下さい。副作用の可能性がありますので、次サリチル酸ビスマスは3週間以上予防的には服用しないでください。
いくつかの抗生物質は、1日1回の服用で旅行者下痢を予防するのに90%の効果があります。しかし、抗生物質は予防薬としては推奨されません。抗菌薬の常用は、副作用や耐性菌による感染を引き起こすリスクを高める可能性があります。抗菌薬は耐性菌による感染症にかかりやすくさせ、また、ウイルスや寄生虫には予防効果がなく、旅行者に誤った安心感を与えることになります。従って、感染予防をしっかりと行うように心がけ、次サリチル酸ビスマスは予防が必要になった時に、補助的に使うことをお勧めします。

旅行者下痢には、どういった治療法が有効ですか?

旅行者下痢は自然治癒傾向が強い病気で、多くの場合は特別な治療をしなくても治癒しますが、経口的に水分を補給することが失われた水分や電解質を補うのにしばしば効果的です。良質な水分を十分に取るよう、いつも心がけてください。8時間のうちに3回かそれ以上、軟便の排泄がある旅行者―特に吐き気、嘔吐、腹部痙攣、発熱、血便などの症状を伴う場合―は、抗菌薬治療が有効でしょう。抗生物質は通常、3-5日間与えられ、薬として現在はフルオロキノロンが選ばれています。一般的には500mgのシプロフロキサシンを1日2回、または400mgのノルフロキサシンを1日2回、3-5日間処方されます。トリメトプリム・スルファメトキサゾール配合薬やドキシサイクリンに対する耐性率が高いため、これらの薬は現在推奨されていません。次サリチル酸ビスマスもまた、治療に使われています。24時間内に、1オンスまたは2,262mgの錠剤を30分ごとに8回まで処方することができ、2日目も同量処方することができます。治療しているにもかかわらず、下痢が続くようであれば、医師の診察を受け、可能性のある寄生虫感染の治療を受けて下さい。

旅行者下痢の治療に腸運動抑制薬を使用してはいけないのはどんな時ですか?

腸運動抑制薬(ロペラミド、ジフェノキシレート、パレゴリック)は消化管通過時間を遅くして下痢を緩和し、その作用によって吸収に時間をかけられるようにします。下痢は腸管病原菌と腸粘膜が接触する時間を最小にするための体の防御機構だと言う人もいます。また、いくつかの研究では、腸運動抑制薬は下痢の期間を短くし、旅行者下痢の治療に有効だという結果が出ています。しかし、これらの薬は発熱または血便のある旅行者は服用しないでください。原因となる細菌の除去を遅らせることによって、症状を悪化させてしまうからです。現在、腸運動抑制薬は店頭で買うことができるため、むやみな使用が懸念されています。これらの薬を下痢の治療に使用した結果、有害な合併症(中毒性巨大結腸、敗血症、播種性血管内凝固症候群)が出ていると報告されています。

オリジナル文献
WGO (World Gastroenterology Organization)
"Frequently Asked Questions On Travelers' Diarrhea"
http://www.wgofoundation.org/assets/export/userfiles/pdfs/CDC%20FAQs.pdf

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