胃食道逆流症(GERD)

患者さんとご家族のためのガイド

胃食道逆流症(GERD)ガイドQ&A胃食道逆流症(GERD)についてお話しします。

胃食道逆流症(GERD)

Q1 胃食道逆流症(GERD)ってどんな病気ですか?

胃食道逆流症(英語表記Gastro Esophageal Reflux DiseaseからGERD(ガード)とも呼ばれています)は、主に胃の中の酸が食道へ逆流することにより、胸やけ(みぞおちの上の焼けるようなジリジリする感じ、しみる感じなど)や呑酸(酸っぱい液体が上がってくる感じ)などの不快な自覚症状を感じたり、食道の粘膜がただれたり(食道炎)する病気です。胸が詰まるような痛みを感じたり、のどの違和感や慢性的に咳が持続する患者さんもいます。胃酸の逆流は食後2~3時間までに起こることが多いため、食後にこれらの症状を感じたときは胃酸の逆流が起きている可能性を考える必要があります。
胃食道逆流症には、①食道炎(食道粘膜のただれ)がなく自覚症状のみがあるタイプ(これを「非びらん性胃食道逆流症」といい、英語表記Non-Erosive Reflux DiseaseからNERD(ナード)とも呼ばれています)、②食道炎があり、なおかつ自覚症状があるタイプ、③自覚症状はなく、食道炎のみがあるタイプの3種類に分けられます(食道粘膜にただれが存在する②③を「逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)」といいます)。
胃食道逆流症は命に関わるような病気ではありませんが、日常生活の質(QOL)にさまざまに影響を及ぼすため適切な対処が必要です。生活習慣を見直したり(食べ過ぎ・高脂肪食摂取・就寝前3時間の食事の回避や、過体重者での減量等)、適切なお薬を服用することで多くの患者さんは症状や食道炎が解消され、精神的、社会活動を含めた総合的な活力、満足度も改善します。近年は患者さんが増えてきており、その原因として食生活の欧米化、ピロリ菌がいない人が増加していることなどが考えられています(Q2参照)。

胃食道逆流症(GERD)の症状

Q2 胃食道逆流症の患者さんはどれくらいいるのですか? 患者さんの生活にはどんな影響があるのでしょうか?

胃食道逆流症による生活への影響

胃食道逆流症は、欧米に比較して日本では頻度の低い病気と考えられてきましたが、病気の認知度が高まったこと、食生活の欧米化、日本人でも胃酸を分泌する能力が高くなったこと、ピロリ菌感染率が減少して元気な胃(胃酸が活発に出る胃)を持つ人が多くなってきたことなどから、最近、患者さんの数がいちじるしく増加しています。現在では成人の10~20%がこの病気にかかっていると推測されています。
胃食道逆流症の患者さんでは、健康な人に比べて日常生活の質(QOL)が低下しているといわれています。
わずらわしい胸やけ症状が日常生活にさまざまな影響を及ぼします。とくに食事が十分に楽しめない、ぐっすり眠れないといったことがあげられます。また、症状のためデスクワークなどの仕事がはかどらなくなったり、会社を休んでしまうような場合もあります。よりよい生活を保つためにも、早く正しい診断を受け、適切な治療を始めることが大切です。

Q3 どうして胃食道逆流症になるのですか?

胃からは胃酸が分泌され、食物の消化を助けています。胃の壁(胃粘膜)は胃酸が直接触れないように粘液などで守られていて、胃自体が胃酸で消化されることはありません。しかし、食道の胃酸に対する防御機能は弱く、食道に逆流した胃酸によって食道粘膜は容易に傷ついてしまいます。食道が長く酸にさらされると食道粘膜がただれ、逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)が起こります。重症の逆流性食道炎の患者さんでは胃酸の逆流時間が長くなっています。通常は、胃と食道のつなぎ目(下部食道括約部/噴門)が胃酸の逆流を防いでいます。しかし、食後には健康な人でも胃酸が逆流することがあります。ただし健康な人では食道内に胃酸が逆流している時間は1日のわずか4%以下で、逆流が問題になることはありません。
健康な人では、逆流した胃酸は食道の蠕動運動(食べ物や飲み物を食道から胃に送るはたらき)によりすぐに胃に戻されますが、胃食道逆流症の患者さんではこの蠕動運動に問題が生じていることがあり、胃酸が食道に溜まってしまうことがあります。また、胃と食道のつなぎ目が上にせり上がる食道裂孔ヘルニアという病気があると逆流防止のはたらきが弱まり、胃酸がより食道に逆流しやすくなり、さらに食道に長時間にわたってとどまることが知られています。
胸やけ、呑酸などの逆流症状を感じるのは胃酸の逆流ばかりではありません。胃酸以外にも、空気が逆流したときや、酸度の弱い胃液が逆流することでも逆流症状が生じることがあります。また、食道粘膜のただれが生じていない非びらん性胃食道逆流症の患者さんでは、食道の知覚過敏があり、わずかな胃酸の逆流や酸度の弱い胃液の逆流でも強い自覚症状を感じる場合があることが知られています。

胃食道逆流症の原因

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