炎症性腸疾患(IBD)

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炎症性腸疾患(IBD)ガイドQ&A炎症性腸疾患についてお話しします。

炎症性腸疾患(IBD)

Q1 炎症性腸疾患(IBD)はどんな病気ですか?

炎症性腸疾患は、英語ではinflammatory bowel diseaseと呼ばれ、その頭文字をとってIBD(アイビーディー)と略されます。IBDは、広い意味では腸に炎症を起こす全ての病気を指しますが、狭い意味では「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」のことを意味します。潰瘍性大腸炎もクローン病も今のところ原因がはっきりとはわかっておらず、このため発症すると長期間の治療が必要な慢性の病気です。また、長期的には病状が悪い時期(再燃期)と落ち着いている時期(寛解期)を繰り返すのが特徴です。
近年、医学の進歩に伴いIBDの病気のしくみが少しずつ解明され、遺伝や環境、腸内細菌の異常などの要因がさまざまに関わり、体内で免疫異常が起こり発症することがわかってきました。衛生状態が整った先進諸国に多い病気で、欧米型の食生活も関与していると考えられています。若い人に発症することが多く、日本では1990年代以降、急激に患者数が増え続けており、潰瘍性大腸炎は20万人(米国に次いで世界で2番目に多い)、クローン病は7万人を超える患者さんがいます。潰瘍性大腸炎、クローン病ともに医療費の一部を国が補助する特定疾患(いわゆる難病)に指定されています。
最近では、有効なお薬が数多く出てきたため、症状をコントロールできる患者さんが多くなってきました。IBDが疑われるような症状(下痢、血便、腹痛、体重減少、発熱など)が出現した場合は、医療機関を受診し、早期に診断を受けることが重要です。また、診断後には適正な治療を継続することが必要で、定期的な通院や検査が大切です。患者さんの病状ごとに治療法が異なりますので、必要なときは主治医と相談し、専門施設を受診するようにしてください。

炎症性腸疾患(IBD)

Q2 IBDになるとどのような症状が出て、生活にどのように影響しますか?

腸の炎症は、下痢、腹痛、血便などの症状を惹き起こします。IBDの種類や、腸のどのあたりで炎症が起こっているかによって症状の出かたや強さが異なり、潰瘍性大腸炎では血便を認めることが多いですが、クローン病では血便はあまり多くありません。重症の潰瘍性大腸炎やクローン病で腸が狭くなる(狭窄がある)と、腹痛が起きたり(ただし、同じような状態でも腹痛を感じない患者さんもいます)、発熱や倦怠感などの全身の症状を惹き起こすこともあります。ほかにも、口の粘膜の潰瘍、目の炎症や手足の関節の痛み、皮膚の炎症など、さまざまな症状を惹き起こすことがあります。クローン病の患者さんでは、およそ半数に肛門に炎症を伴う「痔ろう」(膿が出る穴を伴う痔)という合併症が生じ、膿がたまって痛みを感じたり、膿が出てきたりします。

潰瘍性大腸炎とクローン病の主な症状

多くの患者さんでは、診察やお薬による治療、検査のために定期的な通院が必要です。しかし、症状が落ち着いていれば、健康な人と同じように就学や就労は可能です。また、妊娠や出産も可能です。
IBDは、症状が落ち着いていても腸の炎症は続くため、病状が進行することはまれではなく、また、発病してからの期間が長くなると「がん」が生じる可能性もあるため、定期的な診察や検査は欠かせません。

Q3 IBDはどのように診断し、どのような検査が必要ですか?

潰瘍性大腸炎、クローン病は、ともに腸に慢性の炎症をきたし、腸の粘膜の浮腫(むくみ)、潰瘍(炎症による粘膜のはがれ)、出血などを起こします。なお、潰瘍性大腸炎は原則として大腸にのみ起こりますが、クローン病は口から肛門まで消化管(食道、胃、十二指腸を含む小腸、大腸、肛門)のどこにでも起こり、とくに小腸と大腸に発生します。またクローン病では、肛門部に特徴的な炎症による「痔ろう」(膿が出る穴を伴う痔)をしばしば伴います。

潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、血便や下痢、腹痛などの症状が、慢性的に続くのが特徴です。血 液検査では、貧血や炎症反応に関する項目の異常を認めることがあります。自覚症状や血液検査の異常が続く場合に潰瘍性大腸炎を疑い、診断には大腸の内視鏡検査を行い、炎症の状態や範囲を調べます。なお、内視鏡検査のときに組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査(生検組織検査)を同時に行うこともあります。その他の検査法として、肛門に挿入した管から大腸にバリウムを注入してX線で見る検査もありますが、最近はあまり行われなくなっています。

クローン病
クローン病は、主に若い人で、下痢や腹痛、発熱、体重減少、貧血などの症状が続くのが特徴です。肛門部に痔ろうを伴う患者さんも多くいます。血液検査では、貧血、栄養状態の悪化、炎症に関する項目の悪化などがみられます。自覚症状や血液検査の異常が続く場合にクローン病を疑い、大腸や小腸の内視鏡検査やバリウムを用いたX線検査を行い診断します。小腸の観察には肛門から挿入した内視鏡が大腸を通過してその先にたどり着く必要があるため、以前は観察が困難とされてきました。しかし、近年では先端に風船が付いたバルーン内視鏡を用いることで観察できるようになりました。また、口から飲み込むカプセル型の内視鏡が小腸の診断に役立つ場合がありますが、腸に狭窄があるとカプセルが詰まる危険があるため、カプセル内視鏡を用いるときは事前に同じサイズのダミーのカプセルによる検査で通過可能であるかを確認します。
クローン病では、腸にさまざまな形や大きさの潰瘍が生じるため、確認のために内視鏡検査や病理検査を行います。また腸に狭窄や瘻孔(腸に深い潰瘍ができて皮膚やほかの臓器との間に通路ができた状態)、膿瘍などを疑う場合は、腹部のCT検査やMRI検査を行うことがあります。

ほかの病気との区別のために
IBDを正確に診断するためには、食中毒の原因になる細菌や結核菌、アメーバ赤痢などの感染による腸炎と区別する必要があります。このため、便の細菌の検査を行ったり、特殊な血液検査、結核に関してツベルクリン反応などを行います。また、お薬(解熱鎮痛薬など)でもIBDに似た腸炎を生じることがあるため、患者さんには現在飲んでいるお薬についてお伺いします。

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