過敏性腸症候群(IBS)
患者さんとご家族のためのガイド過敏性腸症候群(IBS)ガイドQ&A過敏性腸症候群(IBS)についてお話しします。

Q7 お薬以外にはどんな治療が有効ですか?

IBSに対する薬物療法以外の治療の代表は、食事療法と運動療法です。
炭水化物あるいは脂質を多く含む食事、コーヒー、アルコール、香辛料などをとることで腹痛ならびに便通の変化が生じやすくなることがあります。症状を誘発しやすい食品がある患者さんの場合は、それらの食品をできるだけ控えるようにしましょう。ヨーグルトなどの発酵食品は症状の軽減に有効ですのでお勧めしています。また、便秘型の患者さんは食物繊維を多く含む食品が効果的です。さらに、適度な運動によっても症状の軽減効果が期待できますので、運動不足の患者さんに対しては、継続可能な運動を行うことをお勧めします。
薬物療法を実施してもIBS症状が軽快しにくい患者さんに対しては、心理療法が有効なことがあります。心理療法には、ストレスマネージメントに加え、リラクセーション(弛緩法)、集団療法、認知行動療法、対人関係療法、催眠療法などがあります。日本では現在のところIBSに対する心理療法を実施している専門医療施設は限られていますが、
症状にストレスまたは心理的な変化が大きく関連していると考えられる場合には、心理療法単独または薬物療法との併用による治療の効果が期待されます。

Q8 IBSの経過で注意することはありますか?

腹痛・便通異常は加齢により軽快するようです。50歳代以上ではそれより若い人より病気になる割合が低い傾向があります。
便通異常のタイプが変わる人も少なくありません。たとえば、下痢型の患者さんの場合、12年後も下痢型のままの人は20%で、15%の人は混合型に、35%の人は症状がなくなったとの報告があります(便秘型になった人はいませんでした)。
IBSの患者さんは健康な人と比較して、胃の痛み・胃もたれ(機能性ディスペプシア)、胸やけ・呑酸(胃食道逆流症)が合併する人は2倍以上多いと推定されます。
また、うつ状態や不安が高い確率で合併し、その場合は日常生活での支障が強くなるといわれています。
さらに注意したいこととして、IBSから潰瘍性大腸炎やクローン病となる確率も高いことが報告されています。IBSと診断されても、便に血がまじる、体重が減るなど気になる点がある場合は、専門医を受診しましょう。
Q9 IBSは予防できるのでしょうか?

残念ながら、今のところIBSを予防できたという研究はありません。しかし、IBSになりやすい原因(危険因子)はある程度わかっています。そのなかで自分で減らせる危険因子には、ストレス、うつの傾向、身体の異常を気にし過ぎる傾向、喫煙があります。
睡眠を十分にとり、規則正しい生活を心がけるとよいでしょう。お酒・タバコに頼らない、自分に合ったリラクセーション法を実践しましょう。食事の工夫、運動、乳酸菌の摂取なども予防に役立つ可能性があります。
IBSの症状で困ったときには、かかりつけ医や内科クリニックにまず相談してください。内視鏡検査が必要な場合は、消化器内科で検査することになります。また、ストレスの影響が強いときや気持ちが不安定な場合は心療内科を受診してください。
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