消化性潰瘍

患者さんとご家族のためのガイド

消化性潰瘍ガイドQ&A消化性潰瘍についてお話しします。

消化性潰瘍

Q7 ピロリ菌の除菌治療はどうするのでしょうか?

ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌に成功すると潰瘍の再発が抑えられることが明らかとなり、保険診療によって除菌治療を行うことが可能です。
最初の除菌治療には、胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)と2種類の抗生物質(アモキシシリン、クラリスロマイシン)を7日間内服します。除菌の成功率は70〜90%程度で、失敗の理由としては、きちんと薬を服用できていない場合と抗生物質が効かない場合とがあります。3種類の薬がパックになった製剤があり、内服を忘れないために有効です。近年は、クラリスロマイシンが効かない耐性菌が増えていることが懸念されています。

ピロリ菌の除菌治療

1回目の治療で除菌できない場合には、お薬を少し変更します。2回目の除菌は二次除菌と呼ばれ、プロトンポンプ阻害薬またはP-CAB・アモキシシリン・メトロニダゾールを7日間服用します。二次除菌も保険診療で治療できます。二次除菌の際に気をつけるべきこととして、メトロニダゾールの服用時はお酒を飲むことが禁じられています。二次除菌の成功率は約90%ですから、2回の除菌により約97%の人は除菌に成功します。
除菌治療を受けても、ピロリ菌が残っているといずれ潰瘍が再発するおそれがあるため、除菌の成否を確認することが重要です。もっとも正確な除菌判定法は尿素呼気試験ですがプロトンポンプ阻害薬の影響を受けるため、プロトンポンプ阻害薬の内服終了から4週間以降に除菌判定を行います。
なお、二次除菌に失敗したあとの三次除菌は保険診療で行えないため、自費での治療となります。また、除菌治療による副作用の多くは軽い軟便程度ですが、薬疹や重い下痢がみられた場合は速やかに主治医に相談するようにしましょう。
再感染はまれであり、除菌後にピロリ菌が再陽性となるのは、年間0~2%程度とされています。

Q8 消化性潰瘍と診断されたらどんなことに気をつければよいのでしょうか?

消化性潰瘍と診断されたら、以下の3つに気をつけることが大切です。

①処方された薬をきちんと服用する
消化性潰瘍が治癒するまでに通常6~8週間かかりますので、自覚症状が改善しても一定期間薬の服用を継続する必要があります。腹痛がよくなったからといって、ご自身の判断で薬をやめてしまうのは危険です。

②消化性潰瘍が悪化する要因を取り除く
喫煙、過度の飲酒、睡眠不足、強いストレスなどは消化性潰瘍が悪化する原因になりますので、禁煙や体調管理が大切です。通常は外来通院で改善しますが、不摂生をしないように、日ごろの生活にも十分に注意しましょう。

③消化性潰瘍の合併症(出血や穿孔)に注意する
潰瘍から多量に出血すると、吐血や下血(黒色便)のほか、めまいや動悸といった貧血症状があらわれます。また、潰瘍がさらに深くなって穿孔する(胃や十二指腸に穴があく)と激しい腹痛を感じます。このような症状が出たときは緊急入院が必要ですから、昼夜を問わずすぐに受診するようにしましょう。

消化性潰瘍と診断された時の注意点

Q9 消化性潰瘍は治る病気なのでしょうか?
進行したらどうなるのでしょうか?

消化性潰瘍の原因のほとんどはヘリコバクター・ピロリ菌感染によるものであるため、ピロリ菌の除菌に成功すれば治ることがほとんどです。また、薬剤性消化性潰瘍の場合には、原因となっている薬をやめれば治りますが、別の病気の治療のためにやめられないこともあります。そのような場合には胃酸を抑える薬などにより潰瘍ができにくくなる治療をします。
消化性潰瘍が進行すると、潰瘍から出血することがあります。ひどい出血では、吐血や黒色便、貧血がみられることがあり、こうした症状があらわれたら速やかに病院を受診してください。内視鏡による止血処置などを行います。
また、もっとひどくなると、潰瘍が深くなり胃や十二指腸の壁に穴があいてしまうことがあります。胃や腸の中の消化液などがお腹にもれることから、強いお腹の痛みとともに腹膜炎を発症します。入院して絶食・点滴による治療や、胃や腸の穴をふさぐ手術が必要となります。
また、潰瘍をきちんと治さずに繰り返していると、その部分がだんだんと狭くなり、食べ物が通りづらくなったり、まったく通らなくなってしまうことがあります。この場合も手術が必要になることがあります。

消化性潰瘍の治療

Q10 消化性潰瘍の予防はどうするのでしょうか?

これまで示してきたように、消化性潰瘍の多くはヘリコバクター・ピロリ菌感染が原因であるため、再発予防のためにはピロリ菌の除菌治療が有効です。除菌に成功すれば、その後は長期間にわたる潰瘍治療は必要なくなると考えられています。ただし、喫煙やストレス、非ステロイド性抗炎症薬などの潰瘍発症の原因となりうるものはなるべくやめたほうがよいでしょう。
非ステロイド性抗炎症薬の服用を続ける必要がある場合は、酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬、P-CAB)により胃酸の分泌を抑えたり、プロスタグランジン製剤により粘膜を保護することによって潰瘍の再発を予防します。また、非ステロイド性抗炎症薬の種類をCOX-2選択的阻害薬というものに変更することも予防に有効といわれています。
脳卒中や心筋梗塞の再発予防のために少量のアスピリンを長期間処方されている患者さんで、以前に消化性潰瘍を発症したことのある人では、アスピリンによる潰瘍再発のリスクが高いといわれています。アスピリンは非ステロイド性抗炎症薬の一種であるため、このような人にもプロトンポンプ阻害薬もしくはP-CABを併用することが潰瘍の再発予防に有効とされています。 ※非ステロイド性抗炎症薬と酸分泌抑制薬の併用は消化性潰瘍になったことのない人にも有効な予防法ですが、保険診療上で治療可能なのは再発予防に限られます。

消化性潰瘍累積発生率

消化性潰瘍累積発生率

消化性潰瘍の既往がありアスピリン内服の開始が予定されている患者さんに対して、プロトンポンプ阻害薬または粘膜防御因子増強薬を投与したところ、プロトンポンプ阻害薬は粘膜防御因子増強薬と比べて消化性潰瘍の再発率を低下させることがわかりました。( J Gastroenterol 2011; 46: 724-735 )

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