肝硬変

患者さんとご家族のためのガイド

肝硬変ガイドQ&A肝硬変についてお話しします。

肝硬変

Q1 肝硬変とはどんな病気ですか?

肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいいます。慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができていきます。肝細胞は壁のなかで再生して増えるため、最終的に壁に囲まれた結節を作ります。肝臓がこのようなたくさんの結節の集まりに変化したものが肝硬変です。
壁に囲まれた肝細胞は、結節の中である程度以上増えると壁に邪魔されて、それ以上増えることができなくなるために、最終的に肝臓は硬く小さくなります。肝臓に流れ込む血管の一つに腸から栄養を運んだり、脾臓や胃などの臓器から血液を運ぶ門脈という血管があります。肝硬変では、肝臓のなかを血液がスムーズに流れなくなり、こうした門脈などの血管の流れが滞ります。
流れにくくなった門脈の血液は、体のあちこちにできる短絡路(シャント)を通って肝臓を通らずに他の静脈に流れてしまいます。この一つが、食道や胃粘膜の下にできるシャントで、血管が不均等に膨れる食道・胃静脈瘤を形成します。血管が大きく膨れてくると血管の壁に弱いところができ、ついに壁に穴が開くと大出血を起こして血を吐いたり(吐血)、胃に溜まった血液が黒い便となって排出(下血)されたりして、貧血やショックの原因となります。
肝硬変では、血液が十分に肝臓に流れ込まなくなったり、全体の肝細胞機能が低下するために、腹水、肝性脳症、黄疸、出血傾向など、さまざまな症状が現れてきます。このうち黄疸、腹水、肝性脳症が認められる肝硬変を「非代償性肝硬変」と呼び、症状のないものを「代償性肝硬変」と呼びます。

肝硬変の組織像
肝硬変の組織像肝臓には線維の壁(青色の部分)で囲まれたたくさんの結節がみられます
肝硬変の成因
肝硬変の成因HBV:B型肝硬変, HCV:C型肝硬変
ALD:アルコール性肝硬変
PBC:原発性胆汁性胆管炎による肝硬変
AIH:自己免疫性肝硬変
Others:その他の肝硬変

Q2 肝硬変の診断や定期的検査はどのようにされるのですか?

肝硬変を診断するには、まず大量の飲酒や過去に受けた輸血、糖尿病など肝硬変になる原因がないか話を聞き、みぞおちに硬い肝臓が触れる、左の肋骨の下に腫れた脾臓が触れる、お腹に水が溜まって膨らんでいる、お腹の表面に沿って走る血管が見える、胸にクモが這うような(あるいは星芒状の)斑点がある、眼球の結膜が黄色いなどの肝硬変に特徴的なサインがないかを診察します。
次に、血液検査で肝臓の働きが弱っていないかを確認します。肝臓には蛋白質や脂質を合成する働きや、物質を処理して体外に排泄する働きなどがあります。合成する働きが弱くなると、血中のアルブミンや総コレステロールの値が低下し、血液を凝固させる蛋白も少なくなり、血液が固まりにくくなります。処理する働きが低下すると、ビリルビンという色素の血中濃度や肝臓の硬さを示すヒアルロン酸値などが上昇し、また腫れた脾臓は血小板を破壊して減少させます。これらの検査値はいろいろな条件に影響され、単独で肝硬変と診断することは不可能なので、いくつかの検査を組み合わせて診断に用います。
肝硬変になった肝臓は、表面がでこぼこしていて、左葉が大きく右葉が小さくなります。腹部超音波検査で肝臓の形や不均一な内部構造になっていないかをチェックします。腹水や腫れた脾臓も超音波検査で確認できます。CTでも同様のことがわかります。また、内視鏡検査で食道や胃の静脈が太くなる静脈瘤がみえた場合は肝硬変の診断の助けとなります。

肝硬変の診噺や定期的検査の流れ

これまで肝硬変の診断においてもっともよいのは、肝臓に針を刺して組織の一部を採取して、顕微鏡で線維の増え方を観察する肝生検とされてきました。一方、最近ではフィブロスキャンをはじめとして体の表面にセンサーをあてて肝臓の硬さを測定する新しい診断機器が次々と開発されています。これらの検査を状況に応じて取捨選択し、得られた検査結果を総合して肝硬変の診断を行っています。
肝硬変には肝がんが合併しやすいので、定期的に超音波検査やCTあるいはMRIで肝がんの有無をチェックします。小さいうちに肝がんを見つければ治療が可能です。肝硬変の原因により肝がんの合併頻度が異なるので、検査の間隔も異なります。また、定期的に血液検査を行い、肝がんのマーカーとされるAFPやPIVKAⅡなどを肝機能とともに調べます。医師の指示に従って、これらの定期的な検査を受けてください。

肝硬変検査

Q3 肝硬変の生活面ではどんな注意が必要ですか?

栄養について
肝硬変患者さんは蛋白質とエネルギーの不足に伴う低栄養状態にあると考えられています。そのため、血液中のアルブミン値が低下し(低アルブミン血症)、むくみや腹水、肝性脳症、糖尿病、筋肉減少(サルコペニア)などの症状が出現しやすくなります。これらの症状を防ぎ、生活の質(QOL)を高めるためには栄養療法が重要です。
栄養療法は以下の2つの点が大切です。

1)蛋白質の栄養障害があるか? 血液中のアルブミン値に注目

肝硬変では蛋白質の合成が低下し、血液中のアミノ酸のバランスがわるくなることが知られています。血液中のアルブミン値は低下し、ロイシン、イソロイシン、バリンといった分岐鎖アミノ酸(BCAA)の血液中の濃度が低下します。分岐鎖アミノ酸の内服が、血液中のアルブミン値上昇に役立ちます。とくに血液中のアルブミン値が3.5g/dL以下の患者さんには、この分岐鎖アミノ酸による治療が勧められています。最近、分岐鎖アミノ酸内服が肝がんをできにくくすることが報告されています。さらに、分岐鎖アミノ酸のさまざまな作用が明らかになり、糖代謝、脂質代謝、免疫の働きによい影響があることも報告されています。

2)エネルギー不足があるか?

もう一つ重要な点は、安静時のエネルギー源となるグリコーゲンが不足し、安静時に必要なエネルギー供給源としての糖質の利用が減り、脂質の利用が増えることです。そのため、食事を摂取しないと、すぐにエネルギー不足(飢餓)になってしまいます。肝硬変患者さんでは8時間絶食すると、健康な人が2~3日間絶食するのと同じ状態になるといわれています。そのため、エネルギー不足にならないように、1日4回以上の分割食や就寝前の夜食(late evening snack:LES)が勧められています。しかし、自己判断では過剰に摂取しがちとなり、肥満になるとかえってわるい影響が出ますので、主治医と管理栄養士の管理のもとで行ってください。
エネルギー不足の正確な評価は、特殊な医療器具が必要なため、どの医療施設でも評価ができるわけではありませんが、上腕筋の周囲長や自覚症状、握力などで簡便に評価することができます。

通常の肝臓と肝硬変後の肝臓

食生活について
最近は、生活習慣の欧米化で、肥満を伴った肝硬変患者さんが増えています。肥満は肝がんの発症を増やすことが明らかになっています。食生活はバランスよく、エネルギー不足にならない程度に、病態に合わせて行うことが重要です。肝硬変では糖尿病の合併が多いので、糖尿病の程度に応じた食事療法が必要です。
また、肝硬変が進行した場合、つまり、黄疸、腹水、肝性脳症がある非代償性肝硬変の場合、刺身などの生食は重篤な感染症になることがあるため避けることが望ましく、とくにビブリオ菌感染症には注意が必要です。

運動について
以前は、肝硬変では安静が推奨されていましたが、最近では骨格筋筋肉量の減少(サルコペニア)を防ぎ、肥満にならないために運動療法は有用と考えられています。黄疸、腹水、肝性脳症のある非代償性肝硬変では無理はできません。代償性肝硬変の患者さんには適度な運動が勧められています。疲れない、運動しながら会話できる、軽い汗をかく、という程度の運動を毎日30分くらい継続することが大切です。ただし最近は、肝硬変患者さんも高齢の方が多いので、この場合、心疾患や整形外科的な疾患には十分留意する必要があります。個々の状態に幅があるため、肝機能や体力に応じた運動の強さを主治医と相談しながら決めるのがよいでしょう。

睡眠のための注意睡眠について
肝硬変では睡眠障害を訴えられる患者さんがいます。その原因の一つとして眠りを調節するホルモン(メラトニン)や食欲調節のホルモン(レプチン)の日内変動の乱れがあるためといわれています。さらに肝硬変による皮膚のかゆみや病気に対する不安感も不眠の原因となりえます。
肝硬変の程度によっては眠りを調節する脳のシステム(GABA-ベンゾジアゼピン系)が入眠導入薬に対して過敏になっていることがあるため、不用意な睡眠薬の服用は慎むべきです。また、昼間の活動レベルに合わせて夜の睡眠を考える必要もあります。昼寝も推奨されますが、長時間(1時間以上)の昼寝は夜間の不眠の原因となります。
かかりつけ医や主治医と相談し、睡眠に対して正しい理解を持ち、不眠が連日続かないように工夫しましょう。

Q4 B型肝硬変はどのように診断し、治療するのですか?

B型肝硬変の診断
B型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染者のなかには、肝臓に炎症(いわゆる肝炎)が生じ、それに伴って肝細胞の破壊と肝臓の線維化が起こる患者さんがいます。この炎症が持続している状態が慢性肝炎で、そのまま炎症が続くと、肝臓の線維化が進み、やがては肝硬変にいたります。このHBV感染による肝硬変を「B型肝硬変」といいます。
HBV感染の有無は、まずHBs抗原検査で判定されます。HBs抗原陽性が持続すれば、HBV持続感染者と判定します。HBV持続感染者のなかで、血中にウイルス量(HBV DNA量)が多く検出される患者さんは、肝炎や肝線維化が進行しやすく、B型肝硬変や肝がんにいたる可能性が高くなります。肝硬変と診断され(Q1、Q2参照)、HBs抗原陽性であれば、ほとんどがB型肝硬変と診断されます。
B型肝硬変が進行すると肝臓の機能が低下し、生命を維持できないような肝不全状態にいたります。また、肝線維化が進行すれば、B型慢性肝炎と比較して肝がんを発症するリスクが高まります。

B型肝硬変とは

B型肝硬変の治療
HBV感染が持続しても、ウイルス量が少なく、肝炎がない場合は治療の適応とはなりませんが、肝不全や肝がんのリスクが高いB型慢性肝炎やB型肝硬変では抗HBV作用のある核酸アナログ製剤の内服治療が推奨されます。一方、インターフェロンはB型慢性肝炎にも使用されることがありますが、B型肝硬変に進行したものには推奨されていません。日本では、B型慢性肝炎およびB型肝硬変に対して抗HBV作用のある内服薬として、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル(テノホビルは薬剤の構造の違いから2種類)の5種類の核酸アナログ製剤が医療保険のもとで使用できます。これらの核酸アナログ製剤は、HBVの増殖を抑え、肝炎を鎮静化させ、さらに肝硬変では肝線維化の改善を促します。また、抗ウイルス薬治療により、病状の改善や生存期間の延長、およびB型肝硬変患者さんの肝発がんを抑制することが期待できます。

B型肝硬変の治療の流れ

HBVに対して核酸アナログ製剤を用いる場合には、薬剤耐性の出現が問題となります。薬剤耐性とは、HBVの遺伝子変異を起こし、薬剤が効きにくい性質を獲得することをいいます。薬剤耐性があると薬剤使用にもかかわらずウイルスは減少せず、ときには逆に増殖して、肝炎が増悪することがあります。薬剤耐性の遺伝子変異は薬剤ごとに異なり、薬剤耐性が出現する頻度も異なっています。主にB型慢性肝炎を対象とした試験結果から、エンテカビルとテノホビルは薬剤耐性が出現しにくいといわれています。このため、B型肝硬変では病状の進展度にかかわらず、エンテカビルもしくはテノホビルが第一選択薬として推奨されます。なお、ラミブジンやアデホビルはエンテカビルやテノホビルより先に保険診療下に使用可能となった薬剤ですが、以前からラミブジンやアデホビルを継続して使用している場合や、薬剤耐性変異が出現した場合は、今後の治療法について専門医に相談してください。
エンテカビルは通常は1錠(0.5mg)を1日1回内服します。空腹時の内服が原則で、食間や睡眠前に内服します。ラミブジン(100mg)、アデホビル(10mg)やテノホビル(テノホビルジソプロキシフマル酸塩300mg、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩25mg)は1日1錠で、食事とは関係なく内服できます。なお、腎機能が低下している場合は、投与量や投与間隔の調整が必要となることがあります。

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