肝硬変

患者さんとご家族のためのガイド

肝硬変ガイドQ&A肝硬変についてお話しします。

肝硬変

Q5 C型肝硬変はどのように診断し、治療するのですか?

C型肝硬変の診断
肝硬変は肝がんになるリスクの高い疾患ですが、肝硬変のなかでもC型肝炎ウイルス(HCV)感染による肝硬変(C型肝硬変)がもっとも肝がんになる可能性が高く、とくに高齢、男性、飲酒歴のあるC型肝硬変の患者さんはリスクが高いとされています。また、肝がんにならなくても肝硬変が進展して肝不全に陥ると腹水や肝性脳症、消化管出血などを合併し、生活の質が低下するばかりでなく、死にいたることも少なくありません。肝硬変の原因がHCV感染であることは、血液検査でHCV抗体を検出し、さらに血中のHCV遺伝子(HCV RNA)を検出することで確認することができます。HCVにはいくつかの遺伝子型がありますが、日本におけるHCV遺伝子型は1型または2型がほとんどで、遺伝子型により抗ウイルス治療薬の選択が異なってきます。

C型肝硬変の治療

  • C型肝硬変の治療の流れインターフェロンと経口抗ウイルス薬
    症状のないC型代償性肝硬変に対する抗ウイルス治療として、かつてはペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が行われてきました。これによりHCVを排除することで、肝機能の改善、肝線維化の軽減に加えて、肝がんの合併や肝不全への進展を抑制する効果が報告され、生存期間も伸びることが明らかになっています。しかし、インターフェロン療法は副作用が強く、血小板減少をきたした肝硬変患者さんでは使用困難であり、強い副作用のために治療を継続できない患者さんも少なくありませんでした。
    2014年7月からインターフェロンを用いない経口抗ウイルス薬(ダクラタスビル・アスナプレビル24週間の併用療法)が医療保険下で使えるようになりました。経口抗ウイルス薬はインターフェロンに比べ副作用が少なく、治療効果が高く、さらに新しい治療薬が年々開発されており、現在ではC型肝硬変治療の第一選択になっています。
    しかし、C型肝硬変のすべてに経口抗ウイルス薬が使えるわけではありません。肝硬変の病態には肝臓の機能(予備能)が保たれていて症状が現れない代償性肝硬変と、黄疸、腹水、肝性脳症の症状をもつ非代償性肝硬変がありますが、経口抗ウイルス薬の治療対象になるのはこのうちの代償性肝硬変に限られます。非代償性肝硬変では安全性と治療効果が確認されておらず、経口抗ウイルス薬を医療保険下で使用することはできません。代償性肝硬変と判断されるのは重症度分類であるChild-Pugh分類(Q10参照)のグレードAのみであり、グレードBとCには抗ウイルス治療は行えません。従来のペグインターフェロンとリバビリンの併用療法についても同様です。
  • HCV遺伝子1型の代償性肝硬変患者さんへの治療
    経口抗ウイルス薬はHCV遺伝子型ごとに用いる薬剤が異なります。HCV遺伝子型1型の代償性肝硬変に対する経口抗ウイルス療法としては、ソホスブビル・レジパスビル配合剤、エルバスビル・グラゾプレビル併用療法、グレカプレビル・ピブレンタスビル配合剤(いずれも12週間服用)の3種類の治療薬が第一選択になります。通常、HCVに対する抗ウイルス治療の効果判定は、治療終了12~24週後の時点で血中HCV RNAが陰性化している(検出されない)ことで著効と判断されますが、上記のいずれの治療薬でもインターフェロンによる前治療歴の有無にかかわらず9割以上の著効率が報告されています。ただし、ソホスブビル・レジパスビル配合剤は重度の腎機能障害や透析患者さんでは使うことができません。経口抗ウイルス薬によってはHCVにある種の遺伝子変異があると効果が低くなることが知られています。治療前調べるなど、専門医に相談してください。
  • HCV遺伝子2型の代償性肝硬変患者さんへの治療
    HCV遺伝子型2型のC型代償性肝硬変の経口抗ウイルス治療にはソホスブビル・リバビリン併用療法、グレカプレビル・ピブレンタスビル配合剤、ソホスブビル・レジパスビル配合剤(いずれも12週間服用)が保険承認されています。ソホスブビル・リバビリン併用療法の著効率は国内の臨床試験で90%以上と報告されていますが、副作用としてリバビリンによる溶血性貧血があり、動物実験では妊娠中に服用すると胎児に奇形が起きるリスクが報告されています。治療中は避妊が必要で、また貧血の程度によりリバビリンの服用量を適宜加減することになります。また、ソホスブビル・リバビリン併用療法とソホスブビル・レジパスビル配合剤は重度の腎障害のある方や透析患者さんでは使うことができません。
    代償性肝硬変に対する経口抗ウイルス治療はペグインターフェロンとリバビリンの併用療法に比べて治療効果が高く、副作用は軽く、患者さんにとっての利便性も高いことから、今では治療法の第一選択となっています。しかし、経口抗ウイルス薬の種類によっては他の薬剤との併用ができない(併用禁忌または慎重投与)など、専門的知識と経験が必要です。
    経口抗ウイルス薬によりHCVが排除されればインターフェロン治療と同様に肝機能検査のALT値は正常化します。しかし、HCVが排除されても肝線維化の改善、肝がん発現抑制、生命予後の改善効果については、この治療法が導入されて間もないことからまだ確立されたデータがありません。これまでのインターフェロン治療によりHCVが排除された場合でもあとから肝がんが発現する例があり、少なくとも治療後5年間以上にわたる肝機能検査、画像診断(超音波検査、CT、MRI)や消化管内視鏡検査などによる定期的な経過観察が必要です。経口抗ウイルス治療によりHCV RNAが陰性化した場合でもこれと同様またはそれ以上の長期にわたる経過観察・定期的画像診断が必要です。
    経口ウイルス薬は高額な薬剤ですが、治療には公費による医療費助成制度があり、自己負担月額10,000~20,000円で治療を受けることができます(2019年3月現在)。手続きについては都道府県の窓口または保健所でお尋ねください。
  • 経口抗ウイルス療法が行えない場合
    抗ウイルス療法でHCVの排除ができずALT値に異常が続く患者さんでは、ウルソデオキシコール酸の服用やグリチルリチン製剤(SNMC)の静脈内注射によりALT値を下げる治療法が必要です。これにより発がんリスクを抑えることが示されています。また、非代償性肝硬変のために抗ウイルス療法を行えなかった患者さんには、上記に加えて適宜、特殊アミノ酸製剤、利尿薬など肝不全に対する治療を行います。

Q6 肝炎ウイルスによらない肝硬変はどのように診断し、治療するのですか?

完成した非B非C型の肝硬変では、肝の線維化を改善する根本的な治療法はありませんので、肝障害が見つかったときにそれ以上障害が進まないように原因に応じた対応をすることが大切です。

非B非C型の肝硬変

アルコール性肝硬変
この病気は、普段からアルコールを多量に、しかも長期に飲んでいる人に起こる肝硬変です。B型・C型肝硬変、および後述の自己免疫性肝硬変、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎ではないことを血液検査で確認することが必要です。アルコール量として、男性では、日本酒を1日に3~5合を20年間続けると肝硬変になるとされています。女性ではその半量でも起こります。診断には飲酒量の評価が重要ですが、お酒好きの人は本当の飲酒量を言わないことも多いので、家族や周りの人に確認することが必要です。予防には、肝硬変になる前に好きなお酒をやめる以外に方法はありませんが、依存症になるとなかなかやめられないのが特徴です。

肥満と関連する肝硬変
最近、飲酒量が多くないのに肝硬変になる人が増えています。食べ過ぎや運動不足のために脂肪肝から脂肪性肝炎となり、さらに肝硬変へと変化するもので、肝臓のメタボリック症候群といわれています。診断は(なかなか)むずかしく、血液検査でウイルス性肝硬変、自己免疫性肝硬変、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎のいずれでもないことを確認し、さらに飲酒歴がなく、肥満や糖尿病を伴っていることが特徴です。本症の予防あるいは進行抑制のためには、脂肪肝が見つかった時点で適切なダイエットと運動療法を行うことが必要です。

自己免疫性肝硬変
この病気は、血液検査でALT値異常に加えて抗核抗体(ANA)、抗平滑筋抗体、抗LKM抗体など自己抗体が陽性であること、IgGが多いことで診断されます。自分の肝臓の成分に免疫細胞が反応してしまうために起こりますので、肝生検で採取した組織の顕微鏡検査でわかります。慢性肝炎の時期であれば、ステロイド薬(プレドニゾロン)を服用することによって改善が期待できます。

原発性胆汁性胆管炎
この病気は、血液検査で胆汁の流れが滞ったときに変化する血液中ALP、γ-GTPなどの胆道系酵素の上昇に加えて、抗ミトコンドリア抗体(抗M2抗体)が陽性でIgMが多いことで診断されます。全身のかゆみで発見されることもあります。胆汁が流れる胆管の内側を覆う細胞が壊れる自己免疫性の病気で、肝生検で採取した組織を顕微鏡で調べるとわかります。病気の進行は、通常ウルソデオキシコール酸の服用によって止めることができます。進行すると肝硬変へ進展し、黄疸が出てきます。

原発性硬化性胆管炎
この病気は、胆道造影検査で肝臓のなかの胆管が細いところと太いところができて数珠のようになった所見から診断されます。原発性胆汁性胆管炎と同様に胆道系酵素が上昇し、かゆみが出ることがあります。胆汁が流れる胆管の周りに硬い線維が玉ねぎのように巻きついてしまうので、肝生検で採取した組織を顕微鏡で調べるとわかります。病気の進行を止められる治療法はまだありませんが、ウルソデオキシコール酸などが使われることがあります。

Q7 食道静脈瘤、胃静脈瘤はどのように診断し、治療するのですか?

食道・胃静脈瘤の診断
消化管から肝臓へ栄養を運ぶ静脈が門脈であり、肝臓内の血流が障害されるために門脈の内圧(門脈圧)が異常に高くなっている状態を門脈圧亢進症といいます。門脈圧亢進症の原因の約90%が肝硬変であり、これに伴って食道・胃静脈瘤、門脈圧亢進症性胃腸症、脾腫、貧血、腹水、肝不全、肝性脳症などが起こります。血液検査(肝機能検査など)、内視鏡検査、各種画像検査(腹部超音波検査、腹部CT、腹部MRIなど)により診断を確定することができます。とくに、食道静脈瘤や胃静脈瘤は内視鏡所見から出血リスクの程度を把握できます。

食道静脈瘤の治療
食道・胃静脈瘤の治療法には、薬物療法(βブロッカーなど)やバルーン圧迫止血法などの保存的治療、内視鏡治療、IVR治療(放射線診断技術を応用した治療)などがあります。
食道静脈瘤の治療は、内視鏡治療が第一選択です。内視鏡治療として、静脈瘤に薬剤を注入する硬化療法と浮き出た血管を縛ってしまう食道静脈瘤結紮術があります。硬化療法は特殊な薬剤(5%エタノールアミンオレート:EO、1%エトキシスクレロール:AS)を用います。食道静脈瘤に針を刺し、硬化剤(EO)を注入して静脈瘤とその供給路を血栓化して閉塞させるEO法と、残存した細い静脈瘤に対して硬化剤(AS)を静脈瘤周囲に注入し、静脈瘤を壊死・脱落させるAS法とを併用することで再発の少ない治療が達成できます。さらに再発させない方法として、1週後にアルゴンプラズマ凝固法(APC)による地固め法を追加すると有用です。これは下部食道の粘膜を全周性に焼灼して人工的な潰瘍を作る方法で、この潰瘍が治癒すると粘膜から粘膜下層に密な線維化が起こり、厚くなった線維組織が食道静脈瘤の発生を防ぎます。
一方、食道静脈瘤結紮術とは、食道静脈瘤にできるだけ多くのOリング(小さな輪ゴム)をかけて静脈瘤を壊死・脱落させる治療法です。簡便な治療法ですが、静脈瘤への血管を閉塞できないため治療後の再発が多く、定期的な観察が重要です。
食道静脈瘤から出血している場合は、まず輸液・輸血を行います。出血が著しい場合はチューブを挿入してバルーンを膨らませて圧迫止血をします。出血量が少ない場合は、内視鏡検査で出血源を診断したうえで内視鏡治療を行います。まず、静脈瘤の出血点をOリング1つで結紮して一時的に止血、次にEO法を行います。1週後に内視鏡検査でEO法が困難になっていたらAS法を行います。ただし、肝予備能が不良な場合には硬化療法は禁忌であり、食道静脈瘤結紮術による治療が主体となります。術後の再発が多いため、術後にAS法を追加する、あるいはAS法後にさらに地固め法を追加し、再発を防止します。
出血リスクの高い食道静脈瘤からの出血予防には薬物療法(βブロッカー)が有効です。ただし、肝臓の機能が不良の場合は適応になりません。欧米では食道静脈瘤に対する第一選択の治療法はβブロッカーの投与ですが、日本では内視鏡治療が行われています。

食道静脈瘤の治療の流れ

胃静脈瘤の治療
胃静脈瘤の治療法として、主に組織接着剤(ヒストアクリルなど)を用いた内視鏡治療(組織接着剤注入法)とIVR(画像下治療)を応用した治療法であるバルーン下逆行性静脈的塞栓術(B-RTO)が行われています。
内視鏡的に組織接着剤を胃静脈瘤内に注入すると、組織接着剤が血液に触れた瞬間に重合して、組織接着剤の重合体(ポリマー)が形成されて胃静脈瘤内は組織接着剤で置き換わります。胃静脈瘤出血例の場合は、組織接着剤を静脈瘤内に注入することで瞬時に止血できるため、胃静脈瘤出血例に対する第一選択の治療法は組織接着剤注入法であることが広く認められています。
B-RTOは、バルーンカテーテルの先端に付いた風船で胃腎シャントを塞ぎ、逆行性に硬化剤(EO)を注入し治療する方法です。一般的に、胃静脈瘤がある場合は、その排血路が胃静脈瘤と左腎静脈とのシャント(胃腎シャント)を形成することが多いために、この治療ができます。胃腎シャントが存在し肝予備能が良好な場合にはこの方法がよい適応となります。
胃静脈瘤出血例を内視鏡治療で止血した後は、そのまま続けて内視鏡治療でその供血路まで閉塞するか、またはB-RTOが選択されます。出血既往がなく、出血リスクの高い胃静脈瘤に対する予防的治療法は施設によって異なり、内視鏡治療か、B-RTOが選択されているのが現状です。

組織接着剤注入法と硬化剤注入法の併用療法とバルーン閉塞下逆行性静脈的塞栓術(8-RTO)

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