NAFLD/NASH

患者さんとご家族のためのガイド

NAFLD/NASHガイドQ&ANAFLD/NASHについてお話しします。

Q4 NAFLD/NASHになるメカニズムについて教えてください

肝臓は、腸で消化・吸収したさまざまな栄養素を取り込んで分解したり新たに合成したりして、バランスよく全身に供給する大事な役割を担っています。食事でとった糖分は、通常はグリコーゲンとして肝臓に一時的に貯蔵されますが、過剰な糖分は中性脂肪に変換されて肝臓にたまります。食事で余分にとった脂肪分はもちろんのこと、蛋白質が分解されてできるアミノ酸も過剰なぶんは脂質に変換されます。
食べ過ぎや運動不足などのために食事でとったカロリーが消費量を上回ると、肝臓で中性脂肪が多く作られ、脂肪肝となります。
また、肥満の人では血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きがわるくなり(これを“インスリン抵抗性”といいます)、このことによっても肝臓で中性脂肪をたくさん作るように促されます。
一方、同じ食事や運動をしていても、太りやすい人とそうでない人がいるように、肝臓への脂肪のたまりやすさも体質によって異なります。最近の研究では、脂肪肝になりやすい遺伝的素因として、「PNPLA3*4」などの遺伝子の型が関係していることがわかってきました。また、栄養障害による極度のやせや、医薬品の副作用などで生じる脂肪肝もあります。脂肪肝になると、過剰な栄養素を分解してエネルギーに変える(燃焼する)ときに、活性酸素などの有害な物質が多くできる“酸化ストレス”という状態を引き起こし、肝細胞が傷ついてしまいます。このため、NASHの患者さんでは、酸化ストレスを防ぐ抗酸化剤が治療に有効だと考えられています。
また、NASHには腸内細菌のバランスの変化や免疫系の反応なども影響しており、肝臓で炎症が強まって線維が増えることで肝硬変へと進行する過程だけでなく、肝がんを発症するステップにも重要な役割を果たしていることが明らかにされつつあります。

*4PNPLA3の遺伝子型は保険医療では測定できません。

Q5 NAFLD/NASHはどうすれば診断できるのですか?

NAFLDは単なる脂肪肝(NAFL)ではなくNASHになっていてもまったく症状がないことが多いので、健康診断のときやかかりつけの先生から「脂肪肝の疑いがあります」といわれたら、一度は専門の医療機関を受診して、詳しい検査を受けていただくことをお勧めします。 NAFLDを正しく診断するためには、これまでの飲酒状況や体重の変化、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の有無、サプリメントを含めた普段服用しているお薬などの詳しい情報がとても重要です。さらに、血液検査や超音波・CT・MRIなどの画像検査で、肝障害を引き起こすほかの病気がないか、NASHの疑いがあるかを詳しく調べます。NASHであることをはっきりと確かめて(確定診断)、どの程度肝臓の病気が進行しているかを正確に把握するためには、肝臓の組織を調べる肝生検を受ける必要があります。肝生検を安全に行うためには、検査中だけでなく検査の後も安静にする必要があるので、通常は1~2泊の入院が必要です。
NAFLDあるいはNASHと診断された後も、定期的に採血や画像検査を受けて、しっかりと経過を追って対処することが大切です。

健康診断などの血液検査で肝機能異常を指摘された患者さんには、まず超音波検査で脂肪肝があるかどうかを確認します。また、B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝疾患、自己免疫性肝炎、薬剤性肝障害など、他の肝臓病がないか、あるいは合併していないかどうかを調べます。脂肪肝以外に肝障害の原因がみられず、これまでの飲酒量がアルコール性肝障害を起こす程度に満たない場合にNAFLDと診断されます。NASHの場合には血液検査で体中の鉄の量を反映する血清フェリチン値、炎症反応をあらわすCRP値、肝臓の硬さを示す指標である肝線維化マーカーなどが高値を示すことが多く、診断の参考になります。
NAFLDと診断された患者さんで45歳以上、高度肥満、糖尿病の合併、AST/ALT比高値(1以上)、血小板低値、肝線維化マーカー高値などを認めた場合は、線維化が進行したNASHの可能性があります。肝生検で得られた組織を顕微鏡で調べることによって、NASHの確定診断や進行度の判定を行います。

Q6 NAFLD/NASHの治療にはどのようなものがありますか?

NAFLDは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を伴うことが多く、またメタボリックシンドロームとも密接に関連しています。NAFLDの患者さんは心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患で亡くなることも多いため、NAFLDの治療では、メタボリックシンドロームを抑えることと肝障害の進行を防ぐことの両方に注意しなければなりません。
NAFLD治療の原則は、食事療法、運動療法などで生活習慣を改善することによって、背景にある肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を是正することです。単なる脂肪肝(NAFL)の場合は、NASHを発症していないかを注意深く確認しながら、食事療法や運動療法などの日常生活に関する取り組みを中心に治療します。NASHの患者さんで肥満がある場合には、体重の7%を目標に減量し、徐々に標準体重を目指すことが勧められます(例;体重90kgの場合、まずマイナス6kgを目標にしましょう)。NASHは放置すると肝硬変に進行したり肝がんを発症したりする危険があるので、初期の段階から積極的に治療を行うことが大切です。

減量のみで効果が十分にあらわれなかった場合は、積極的にお薬による治療を考えます*5
抗酸化作用があるビタミンEや、インスリンの効きをよくする作用のある糖尿病のお薬などがNASHの患者さんに有効であることが示されていますが、長期間にわたって肝硬変への進行や肝がんの発症を防ぐことができるかどうかは、まだはっきりと証明されていません。
また、脂質異常症や高血圧のお薬のなかにもNASHに有効であることが期待されているものがあり、これらの生活習慣病を伴っている場合にはそのようなお薬を選んで治療を行います。

*5現時点でわが国ではNAFLD/NASHに有効な薬剤で保険適用されているものはありませんが、現在有効な薬剤の開発が進んでいます。

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