慢性膵炎

患者さんとご家族のためのガイド

慢性膵炎ガイドQ&A慢性膵炎についてお話しします。

慢性膵炎

Q1 慢性膵炎ってどんな病気ですか?

膵臓は、多くの消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌して食べ物を体内で消化するはたらきと、インスリンなどのホルモンを血液中に分泌して体内の糖分をコントロール(血糖のコントロール)するはたらきを担っている臓器です。
慢性膵炎とは、長期間にわたって膵臓の炎症が持続することによって、この2つのはたらきがいずれも徐々に衰えていく病気です。つまり、膵液(消化酵素)は本来食べ物を消化するのですが、膵臓自身を溶かしてしまい、繰り返し炎症を引き起こすことで膵臓の正常な細胞(腺房細胞、ランゲンハンス島)が徐々に破壊され、膵臓が硬くなったり(線維化)、膵臓の中に石(膵石)ができたりします。原因として最も多いのは長期間にわたり大量のお酒を飲むことです。そのほか、胆石やストレスでも発症することが知られており、なかには原因がはっきりしない場合もあります。また、慢性膵炎になりやすい家系があることもわかっており(家族性膵炎)、こうした人は遺伝子の異常が原因のため、若いうちに発症する場合もあります。

健康な膵臓と慢性膵炎の膵臓

健康な膵臓と慢性膵炎の膵臓

正常な膵臓を顕微鏡でみると、膵酵素を産生する膵腺房細胞が密集していますが、慢性膵炎になると膵臓に著しい線維化が起こり、膵腺房細胞が脱落して減少し、膵管は不整に拡張して、膵菅の中に結石ができます。ランゲルハンス島は線維化の中に孤立します。

慢性膵炎になった膵臓

慢性膵炎になると、病気は徐々に進行し、基本的に治ることはありません※1一般的には40~50歳代で発症することが多く、お腹や背中の痛み、お腹の上のほうを押されると痛い、体がだるいなどの症状があります。腹痛は、お酒を飲んだあと、食べすぎや脂肪分のとりすぎなどにより引き起こされます。慢性膵炎を発症すると、腹痛の発作が5~10年にわたり繰り返し起こります※2。その間に膵臓の中では炎症が進行し、消化酵素やインスリンなどのホルモンのはたらきがだんだん弱くなっていきます。その後は、腹痛は弱まる、あるいはなくなり、今度は食べ物がうまく消化できなくなったり、糖尿病を発症したりするようになってきます。
また、患者さんのなかには、はじめからお腹や背中の痛みをまったく感じない状態で病気が進行し、糖尿病を発症してはじめて慢性膵炎だったことがわかる人もいます。

*1最近の研究で、早期(軽症)のうちに、早めに治療を受けることで進行が止まったり、改善することがわかってきました。なかには正常に回復した人もいます。 *2適切な治療を行うことで痛みをコントロールすることが可能です。

慢性膵炎の定義

Q2 慢性膵炎の患者さんはどれくらいいるのですか? 患者さんの生活にはどんな影響があるのでしょうか?

慢性膵炎の病期

日本では数年おきに慢性膵炎の患者さんに関する全国調査が行われています。最近の調査では、2011年の1年間に慢性膵炎の治療を受けた患者さんは人口10万人あたり52.4人(全国で約6万7千人)いたことがわかっており、この数は1999年から12年の間で1.5倍以上に増えています。
また、慢性膵炎を新たに発症した患者さんは人口10万人あたり14.0人と推計され、こちらも12年間で2倍以上に増えています。
慢性膵炎を発症すると、腹痛に悩まされることが多く、痛みのために食事ができなくなってしまうなど、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。さらに慢性膵炎が進行すると、膵臓のはたらきが衰えることにより消化不良による栄養障害を引き起こしたり、インスリンが減少して糖尿病になってしまうことがあります。

慢性膵炎の病期

慢性膵炎は、病気の進行過程によって「代償期」、「移行期」、「非代償期」の3つに分けられます。
「代償期」では、まだ膵臓のはたらきは保たれていて、そのために膵液の分泌に伴い腹痛を繰り返します(急性膵炎)。「移行期」になると、膵臓のはたらきが徐々に衰え、腹痛はしだいに軽くなります。「非代償期」では、慢性膵炎が進行して膵臓のはたらきがほとんど失われ、腹痛は軽減します(なくなることもあります)が、食べ物の消化と血糖値の調節が不十分となり、栄養障害や糖尿病を引き起こします。

Q3 慢性膵炎はどうすれば診断できるのでしょうか?
どんな検査をするのでしょうか?

慢性膵炎を診断するには、まずはQ1に示したような症状が手がかりとなります。お腹や背中の痛み・違和感、消化不良などから慢性膵炎が疑われたら、問診や血液検査に加えて、腹部レントゲン(X線)、腹部エコー(超音波)、CTなどの画像検査を行います。それぞれの画像検査には以下に示すような特徴があるため、主治医と相談して検査を受けるようにしてください。

腹部レントゲン(単純X線)検査

患者さんの苦痛がなく、低費用で検査でき、膵石症の診断に有用です。最も性能のよいCT検査に比べても、約3分の2の膵石は単純X線で見つけることができるとされています。ただし、進行した石灰化慢性膵炎の診断しかできません。

腹部エコー(超音波)検査

患者さんの体への負担が少なく、膵臓の形をみることができます。
慢性膵炎における検査では、膵臓の大きさ、形、膵石の有無、嚢胞(膵臓の内部や周囲にできる袋)の有無などを確認します。胃腸のガスの影響や内臓脂肪の影響を受けやすいのが欠点です。

CT検査

腹部全体をみるのに優れ、造影剤を使用することが多いですが、比較的体への負担の少ない検査です。慢性膵炎における検査では、膵臓の大きさや形などが詳細に確認できるほか、周囲の臓器との関連を調べることができます。また、慢性膵炎に合併しやすい膵臓がんの診断に有用です。

MRI検査

磁気を用いた検査です。膵胆管MRI検査(MRCP)は体への負担が少なく、主膵管の変化や拡張した分枝を調べることができます。さらに仮性嚢胞(膵炎や腹部の外傷により生じる嚢胞)はよく描出されるため、進行した慢性膵炎の診断に有用です。ERCPに比べると、こまかい変化まで見つけることは難しいですが、膵管に刺激を与えることがないため急性膵炎になるリスクがありません。

EUS(超音波内視鏡)検査

高性能の超音波を装着した内視鏡を挿入することにより胃や十二指腸の壁から膵臓に超音波をあて、膵臓全体さらに胆管や周囲の臓器が観察できます。近年、この検査により早期(軽症)の慢性膵炎の変化が診断できることが注目されています。CTやMRIで異常がみられないがEUSで変化があり、「持続する上腹部痛」、「血中または尿中膵酵素値の異常」、「膵外分泌障害」、「1日80 g以上の持続する飲酒」のうち2項目以上を満たすことで「早期慢性膵炎」と診断されます。

ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)検査

内視鏡を使って十二指腸から膵管を造影し、主膵管と膵管の分枝を最も明瞭にみることができる検査です。進行した慢性膵炎や早期慢性膵炎の診断に用いられます。膵管に刺激を与えるため検査後に急性膵炎を発症する場合があり、検査実施はリスクを考慮して慎重に判断します。

慢性膵炎の診断

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