慢性膵炎

患者さんとご家族のためのガイド

慢性膵炎ガイドQ&A慢性膵炎についてお話しします。

慢性膵炎

Q4 慢性膵炎の治療はどうするのでしょうか?

慢性膵炎の治療は、病気の原因(アルコール性か他の原因か)、活動性(急性膵炎が繰り返し起こっているか)、重症度(消化不良や糖尿病、外科的治療が必要な合併症などがあるか)を調べて、それらに応じて生活指導や食事療法、お薬による治療を始めていきます。Q2で示したとおり、慢性膵炎は病気の進行過程によって「代償期」、「移行期」、「非代償期」の3つの時期に分けられ、治療はそれぞれの時期の症状や膵臓の機能がどれだけ保たれているかに応じて行います。
代償期に多い痛みに対しては、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬や抗コリン薬)や、痛みの原因となる炎症を抑える蛋白分解酵素阻害薬の内服を行います。断酒も腹痛消失に有効で、予後改善のためにも勧められます。また高脂肪食後に腹痛を伴う場合、食事脂肪制限を行うこともありますが、長期の過剰な脂肪制限は低栄養となるため気をつけなければなりません(Q6参照)。これらが有効でない場合に、内視鏡的治療や、体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)、外科的治療が有用となる場合もあり、詳しくは主治医にご相談ください。

栄養状態の悪化 また、非代償期になると消化不良の症状が出てきます。膵臓は食べ物を消化するための消化酵素を含む膵液を分泌して腸に送るはたらきがありますが、このはたらきがわるくなり、食べ物をうまく消化できず未消化の便や軟便が出たりします。また栄養素を吸収できないため栄養状態がわるくなります。これらを防ぐために消化酵素薬を服用します。慢性膵炎では膵液の中のアルカリ成分も少なくなっているため、胃酸を中和できず腸の中が酸性に偏ります。この状態では消化酵素がうまくはたらきにくいことから、胃酸の量を少なくするためのお薬も一緒に内服します。

さらに、非代償期では血糖値の調節が不十分となり、糖尿病を発症しやすくなります。慢性膵炎になると、膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモン(インスリン)のはたらきが弱まり血糖値が上昇します。また、低血糖(血糖値が下がりすぎる)のときに血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)のはたらきも弱くなるため、低血糖が長引きやすくなることにも注意が必要です。これらに対しては糖尿病治療のためのお薬を用います。一般的に多い2型糖尿病とは原因が異なるため、治療の方法が違います。 実際の治療では、患者さんの状態や検査結果などを踏まえて治療方針を決めることが必要となるため、主治医とよくご相談ください。

慢性膵炎の治療

Q5 慢性膵炎と診断されたらどんなことに気をつければよいのでしょうか?

慢性膵炎の患者さんは、お腹や背中の痛みの治療や、栄養状態の改善、また合併症があらわれた場合に速やかに診断するために、長期間にわたって専門医療機関への通院・治療を続ける必要があります。医師や医療スタッフのサポートを受けて、根気よく治療を進めましょう。
痛みがある時期とない時期ではお薬や適切な食事のしかたが異なります。また、とくに強い痛みがあると生活に支障をきたすことから、そういったときは我慢せずに、日ごろから主治医とよく相談することをお勧めします。
アルコールが原因の慢性膵炎の患者さんでは、飲酒によりしばしばお腹や背中の痛みを引き起こします。大量にお酒を飲み続けると、膵臓の炎症による強い痛みが繰り返し起こり、そのたびに膵臓の細胞が少しずつ壊れていきます。だんだんと消化酵素の分泌が減り、消化不良や栄養不良が進み、やがて糖尿病を発症します。また、進行すると膵臓がんを発症するリスクが増加します。
残念ながら、ここまでなら飲んでもよいというお酒の安全な量はありません。病気の進行を防ぐにはお酒を一切飲まない「断酒」が必要です。とくに糖尿病を発症した患者さんでは低血糖などにつながり危険です。断酒に成功した患者さんでは、痛みの程度や回数が弱まり、病気の進行が遅くなります。
また、タバコも慢性膵炎を進行させるため、禁煙するように心がけましょう。

慢性膵炎と診断されたら気をつけること

慢性膵炎患者さんの日常生活のポイント

慢性膵炎の患者さんは、この病気と長く付き合っていくことになります。患者さん自身が自分の膵臓の状態を理解し、断酒、禁煙、食事、お薬などの日常の生活をうまくコントロールすることが大切です。ご家族にも理解していただき協力が得られるとよいでしょう。
お腹や背中の痛みは繰り返し続く時期とおさまる時期がありますが、気づかないうちに糖尿病を発症したり、栄養状態がわるくなってしまうことがあるため、通院・治療は途切らせずに続けることが重要です。

慢性膵炎患者さんの日常生活のポイント

Q6 慢性膵炎と診断されたらどんな食事をすればよいのでしょうか?

慢性膵炎の患者さんの食事療法で大切なことは、「栄養価が高く、また、お腹の痛みが出にくい食べ物を選ぶこと」です。
慢性膵炎と診断されても、基本的にカロリー制限は必要ありません。非代償期では、糖尿病を合併していることが多いためカロリーを制限しがちではありますが、やせている患者さんでは、さらに体重が減少することになるため、主治医の先生と相談しながら体重管理を行ってください。通常、1日あたり「30~35kcal×標準体重(kg)」は必要です(たとえば、標準体重60kgの人であれば「30~35kcal×60kg=1,800~2,100kcal」となります)。
基本栄養素(蛋白質、炭水化物、脂肪)のうち、慢性膵炎の患者さんが注意しなければならないのは脂肪です。お腹に痛みなどの症状があるかないかにより、どれだけ脂肪をとってよいかは異なります。お腹に痛みなどの症状がある場合はしっかりと脂肪を制限しなくてはいけません。一方、症状がなければ脂肪をとりすぎないよう気をつければ大丈夫です(1日あたり40~60g)(日本人の平均脂肪摂取量は1日あたり55~60g)。以前は、慢性膵炎と診断された人には、一律に脂肪を控えてもらっていましたが、今では痛みなどの症状がない場合は脂肪をとるように推奨しています(消化酵素薬の内服が必要な場合があります)。慢性膵炎が進行し、膵臓のはたらきが低下すると食べ物を消化する力が低下します。とくに脂肪の消化吸収がわるくなりやすく、その場合には生きていくのに必要な必須脂肪酸や脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収もわるくなります。そのため、慢性膵炎の食事療法では、病状に応じて消化酵素薬を十分量服用することが大切です。なお、代償期では基本的に動物性脂肪をとりすぎることはできませんが、湯引きなどの調理法の工夫や、植物性脂肪や魚類から適切な量の脂肪をとることは可能です。
また、お薬として利用できる栄養剤には、脂肪をほとんど含まないものがありますので、お腹に痛みなどの症状がある際に利用することで、膵臓への負担を避けつつ摂取カロリーを補い、栄養バランスを整えることができます。
Q4、Q5でも示したように、実際の治療は食事療法だけでなく、薬物療法や生活指導などを含めて総合的に行うため、主治医とよくご相談ください。

※標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

・転載申請、ご意見・ご要望等
掲載記事の内容は、全て発行当時のものです。
本ガイドは日本消化器病学会の著作物であり、無断転載・無断複写を禁じます。

転載申請は、下記ページから手続きをお願い致します。
http://www.nankodo.co.jp/pages/reproduction_jsge.aspx

本ガイドへのご意見・ご要望等については、今後の改訂時の参考とさせていただきます(下記までお寄せください)。
個別の医療相談・健康相談にお答えするものでないことをご理解ください。
原則としてご返信はいたしませんので、あらかじめご了承ください。

E-Mail:info[atmark]jsge.or.jp ※[atmark]を@に置き換えてください。
患者さんとご家族のためのガイド 担当者宛

患者さんとご家族のためのガイド トップへ戻る