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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への消化器病診療における留意点

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への消化器病診療における留意点

 今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大状況では,消化器病診療においても,国・厚労省の方針や各施設の状況等を考慮した慎重な対応が求められています。以下に,現在のCOVID-19の状況に鑑みた消化器病診療の留意点について記します。なお,この内容は本学会が示したひとつの目安ですので,地域,施設の状況に応じて,各施設の関連部門等と協議し具体的な方針を決定してください。
 

消化器病専門医 COVID-19に対する今後の対応 [PDF:978KB]
表1 COVID感染を考慮した検査・治療の適応 [PDF:447KB]

 

1. COVID-19の感染経路について
 2019新型コロナウイルスの主な感染経路は飛沫感染および接触感染です。この点を踏まえて診療にあたる必要があります。また外来診察室や各種検査室,手術室などの密閉された空間ではエアロゾルによるウイルス伝播に注意する必要があります。特に,上部消化器内視鏡ではスコープ挿入時に咳嗽が誘発され,エアロゾルによる医療従事者への感染も危惧されます。また,胃管やイレウス管挿入,腹腔鏡,気管挿管・抜管,消化器に対する電気メス処置などもエアロゾルを発生する可能性が高いとされています。一方,糞便からのウイルス排出も指摘されており,下痢や血便等を主訴とする患者に対する診察室内での診療や下部消化管内視鏡検査における潜在的な感染リスクもあります。
   
2. 消化器病診療における留意点
 COVID-19拡大に鑑みた消化器病診療における留意点について以下に記します。
 
1) 検温・問診の重要性
 来院時には,速やかに確実な問診・検温を実施し,COVID-19を疑う問診内容や臨床症候がある場合は,あらかじめ十分な防護をした上で診療することを推奨します。なお,最近では,COVID-19における下痢や腹痛、悪心嘔吐などの消化器症状が数多く報告されており,消化器診療を最初に受ける場合もあることにご留意ください。
 
持続する感冒症状や発熱、息苦しさ(呼吸困難感)、強いだるさ(倦怠感)のいずれかがある場合
2週間以内の新型コロナウイルスの患者やその疑いがある患者との濃厚接触歴
明らかな誘因のない味覚・嗅覚異常
明らかな誘因のない4-5日続く下痢等の消化器症状
2) 診断確定もしくは疑い濃厚患者に対する対応
 各施設の感染対策部門に相談の上,陰圧室への隔離等も含めご検討ください。その上でしっかりとした予防策を講じて診療することが必要です。
3) 診療における感染予防策
 COVID-19確定の患者,および上記1)における4つの条件のいずれかに該当する患者の診察においては,飛沫予防策と接触予防策を標準予防策に追加して行うことを推奨します。各施設における個人防護具の状況にもよりますが,通常は眼・⿐・⼝を覆う個⼈防護具(マスクとゴーグル/アイシールド/フェイスガードの組み合わせ)、キャップ、長袖ガウン、⼿袋を装着します。なお,⼀時的に⼤量のエアロゾルが発⽣しやすい消化器内視鏡検査・胃管挿入・気管挿管および抜管・腹腔鏡等においては、上記にN95マスクを追加することが良いとされています。また換気も十分に行います。なお,本来は症例ごとの交換が推奨されますが,医療資源の問題から各施設で運用を決めてください。フェイスガードに関してはエタノール消毒での再使用も考慮できます。
また,上記の条件に該当しない方のCOVID-19の報告も相次いでいるため,そのような方に対するエアロゾル発生の危険のある処置に際しても,飛沫予防と接触予防を講じた対処が推奨されます。
4) 各種検査および侵襲性のある治療の実施適応
 COVID-19が確定,または臨床的にCOVID-19を疑う患者(上記①−④のいずれかに該当)に対しては,緊急性のない検査の延期を推奨します。内視鏡検査・治療や外科的手術の適応に関しては,各検査治療・外科的手術ごとの当該分野の専門家によって,その時点で行う必然性、患者の病態や年齢によって異なる術後の回復期にCOVID-19肺炎発症のリスク,検査治療・外科的手術の延期がもたらす医学的危険性を総合的に検討して決定してください。また,いわゆる無症候性COVID-19にも注意が必要ですので,エアロゾル大量発生の可能性のある内視鏡検査・治療の際は、上記1)の条件に該当しない方においても,その地域,その時期のCOVID-19感染状況に鑑みて適応をご検討ください。
5) 入院,各種検査治療における対応
 このような患者さんに対して,あらかじめ検温表を配り検査当日までの体温や異状等を記載して頂き,入院や検査・治療当日までの状態をしっかりと把握した上で診療を行ってください。発熱等異常がみられた場合、報告して頂く体制を取って下さい。
6) 外来診療における待合環境の整備
 診察室内そして待合等における患者(付添い者も含む)間の距離を十分取れる環境の整備は重要です。
7) 消化器病診療に携わる(医師をはじめとした)医療従事者としての心得
 体調の管理は必要であり,連日の検温は実施してください。そして,何らかの異常がみられたら,管理者に報告し,診療に携わらないこともご考慮ください。


第1版 2020年04月07日
第2版 2020年04月13日
第3版 2020年07月01日

 

一般財団法人日本消化器病学会
理 事 長 小池 和彦
学会在り方・将来像検討委員会
担当理事 窪田 敬一
学会在り方・将来像検討委員会
委  員 入澤 篤志

 

 

 

【ご参考】他団体からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報
(2021/01/15更新)
厚生労働省 自治体・医療機関向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症)
日本医学会連合 COVID-19 expert opinion(第2版(2021年1月4日版))
    様々な基礎疾患(持病)など、重症化リスクをお持ちの皆様へ
新型コロナウイルス感染症に関する注意喚起
もし発熱などの症状が出たら直ぐに受診中の医療機関にご連絡ください!
日本内科学会 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報
日本消化器内視鏡学会 新型コロナウイルス(COVID-19)関連情報
日本肝臓学会 新型コロナウイルス(COVID-19)関連情報
日本胆道学会 新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言
日本臨床栄養代謝学会 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言-JSPEN12の提言-
日本栄養・食糧学会 新型コロナウイルス感染症への栄養面での対処~日本栄養・食糧学会からのお願い~
APAGE Guidelines on the Management of Inflammatory Bowel Disease during the COVID-19 Pandemic [PDF:235KB]

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