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健康情報誌「消化器のひろば」No.17

健康情報誌「消化器のひろば」No.17

知っておきたい治療薬 肝不全の薬

肝不全の薬

肝不全とは、肝臓の働きが大幅に低下した状態のことです。もともと正常だった肝臓が短期間で悪くなったものが急性肝不全、慢性の肝臓病が徐々に進んだものを慢性肝不全と呼びます。ここでは慢性肝不全の薬として、肝臓が悪くなった原因に対する治療薬と、肝不全によって起こった症状に対する治療薬について解説します。

痛み止めの副作用

肝臓が悪くなった原因に対する治療薬

 B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスに対する治療薬は近年大きく進歩しました。B型肝炎ウイルスの内服治療薬である核酸アナログ製剤(エンテカビル、テノホビル ジソプロキシル フマル酸塩、テノホビル アラフェナミド フマル酸塩)は、ウイルスの増殖を確実に抑えることで肝臓の働きを回復させます。

 肝機能が悪いC型肝炎でもソホスブビル/ベルパタスビル配合錠を12週間内服することで90%以上の確率でウイルスが排除できるようになり、3か月後には約4分の1の患者さんで肝機能が改善します。

腹水の治療薬

 おなかの中に水がたまった状態が腹水です。たんぱく質の不足、塩分・水分のとりすぎ、アルドステロンやバゾプレシンなどのホルモンの増加などが引き金となります。

 治療薬として、第一に抗アルドステロン薬であるスピロノラクトンを使用し、効果が不十分であればループ利尿薬であるフロセミドを併用します。

 それでも効果がない場合には、バゾプレシン作用を抑えるトルバプタンを併用します。トルバプタンは水利尿薬と呼ばれ、短期間で大量の尿が出ることが多いため、治療を開始する際には入院が必要です。

肝性脳症の治療薬

 肝性脳症とは、肝機能が悪いためにアンモニアなどの神経毒物質がたまって、意識を悪くする状態です。適切に治療することで、意識の状態は回復します。

 内服薬の合成二糖類は大腸のpHを下げることでアンモニアの吸収を抑えます。

 腸管で吸収されない抗菌薬であるリファキシミンは、大腸のアンモニア産生菌を阻害することによりアンモニア産生を抑えます。

 肝不全では分岐鎖アミノ酸、亜鉛、カルニチンなどが欠乏しています。分岐鎖アミノ酸製剤は、アミノ酸のバランスを整えることで肝性脳症を改善します。亜鉛が不足している場合には、亜鉛製剤を投与することでアンモニア値や肝性脳症が改善するとの報告があります。カルニチンはアンモニアの代謝を促進する作用があり、カルニチン欠乏症に対してカルニチン製剤を投与することでアンモニア値や肝性脳症が改善するとの報告があります。

 肝性脳症は再発を繰り返すことがあるので、治療を継続する必要があります。

図 日本消化器病学会ガイドラインHP から改変引用

図 日本消化器病学会ガイドラインHP から改変引用

武蔵野赤十字病院
副院長・消化器科部長

黒崎 雅之

武蔵野赤十字病院 副院長・消化器科部長 黒崎 雅之

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