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健康情報誌「消化器のひろば」No.29-1

FOCUS 高額療養費制度の現在と未来

高額療養費制度とは

 1カ月の医療費の自己負担が一定の金額(上限額)を超えた場合に、超えた分を加入している公的医療保険から支給される仕組みです。1973年に創設され、半世紀以上にわたり日本の医療を支えてきました。上限額は年齢や所得によって異なり、一般的な所得層(70歳未満)では8万~9万円程度、住民税非課税の方では3万5千円程度です。「お金の心配を理由に治療を諦めなくて良い」という国民皆保険の理念を支える、大切な制度です。

消化器疾患の患者さんと高額療養費制度

 消化器疾患の中には、高額な薬剤による治療を長期間続ける必要があるものがあります。肝炎や潰瘍性大腸炎・クローン病、消化器がんなどでは、抗ウイルス薬や生物学的製剤(バイオ製剤)、免疫療法薬、分子標的薬などが用いられ、月の治療費が数十万円に達することもあります。
高額療養費制度があることで、患者さんは月々の自己負担を上限内に抑えながら、必要な治療を継続することができます。さらに、同じ月に複数の医療機関を受診した費用や同一世帯の家族の費用を合算できる「世帯合算」、年4回目以降の上限額がさらに下がる「多数回該当」という仕組みもあります。長期治療が続く場合には、こうした仕組みを知っておくと治療と生活の両立に役立つことがあります。

制度をめぐるこれまでの経緯と今後

 近年は高齢化が進み、また、高額な薬剤の普及により制度の支出が増大し、財政悪化と現役世代の保険料負担増が問題となっています(表)。
負担増は避けられない面もありますが、急激な変化を抑える工夫や長期療養者への配慮も盛り込まれています。「誰が医療費を負担するか」という問いは社会全体に関わるテーマであり、引き続き注目が必要です。

申請先と参考情報

 高額療養費制度の利用方法は、加入している医療保険によって異なります。治療前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いを上限額までに抑えることができます(マイナ保険証でも同様の仕組みが利用できます)。申請先は保険の種類によって異なりますので、以下を参考にご確認ください。わからない場合は、勤務先やお住まいの市区町村窓口に相談すると良いでしょう。
制度を正しく知り、必要な支援を上手に活用することが、安心して治療を続けるための大切な一歩になります。

【ご注意】
本記事の制度内容・金額・スケジュールは執筆時点(2026年春)の情報に基づいています。高額療養費制度は今後も見直しが続く可能性があります。最新の情報は厚生労働省または加入している保険者にご確認ください。


群馬大学大学院医学系研究科 内科学講座
腫瘍内科学分野 教授

高張 大亮

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