
私たちの腸の中には数十兆~100兆個程度の細菌が存在し、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。近年、「腸活」という言葉とともに、腸内フローラ検査への関心も高まっています。
腸内フローラ検査では、便に含まれる細菌の遺伝情報を調べます。代表的な方法の一つが16S rRNA遺伝子解析(16S解析)で、細菌に共通する遺伝子の一部を解析し、「どのような細菌がいるか」を評価します。一方、メタゲノム解析では便中の遺伝情報をより幅広く調べるため、「どのような細菌がいて、どのような働きを持つ可能性があるか」までを解析できます。ただし、解析が複雑なため費用は高くなります。
図では、健常な人と疾患A・疾患Bの3群を比較した例を示しています。まず「細菌の構成」は、どのような菌がどれくらい存在するかを示します。「多様性」では細菌の豊かさやバランスを評価し、「全体像の比較」では腸内細菌全体の特徴が似ているか、異なるかを可視化します。
近年、腸内フローラは肥満、糖尿病、炎症性腸疾患、肝疾患、アレルギーなど多くの病気との関連が報告されています。しかし重要なのは、腸内フローラ検査でわかるのは「関連」であり、「原因」そのものではない点です。ある菌が増減していても、その菌が病気を引き起こしたのか、病気の結果として変化したのかは、この検査だけでは判断できません。因果関係を調べるためには、患者さん由来の腸内細菌を動物へ移植する研究などが必要です。このような研究によって、腸内細菌と病気との関係が少しずつ明らかになっています。
腸内細菌そのものを治療標的とする研究も進んでいます。食事療法やプロバイオティクス、プレバイオティクスに加え、便微生物移植(FMT)なども研究・応用が進められており、一部の疾患では実用化も始まっています。また、将来的には、一人ひとりの腸内フローラに合わせた個別化医療につながる可能性も期待されています。
現在、腸内フローラ検査の多くは健康増進や研究目的で利用されており、一般診療で広く保険が適用される検査ではありません。検査結果に一喜一憂せず、生活習慣を見直すきっかけとして活用することが大切です。

